将棋の藤井聡太竜王(名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖、22)に佐々木勇気八段(30)が挑戦する第37期竜王戦七番勝負が10月5日、東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で第1局が行われている。対局前日の4日、事前インタビューに応じた佐々木八段は若き絶対王者との戦い方についてコメント。「藤井竜王と他の棋士とは、対策の仕方が違う」と並々ならぬ思いを抱えて開幕を迎えたことを語った。
佐々木八段は、2010年10月に16歳でプロデビュー。天才の登場と大きな話題を呼び、2013年には若手棋戦の加古川青流戦で優勝を飾るなど、次世代のタイトルホルダー候補として常に注目を集めてきた。しかし、番勝負挑戦の道のりは遠く、今期の竜王戦七番勝負が初挑戦。プロ入りから14年の歳月を要することとなった。
自身にとっても、ファンにとっても待望の大舞台。開幕前日にインタビューに応じた佐々木八段は、「挑戦を決めた時から2カ月ほど時間があったが、自分の感覚では1週間に感じるくらいあっという間だった」とコメントした。
今年度の佐々木八段は、これまでに溜め込んだ力を爆発させるように勝ちに勝ち、15勝2敗で勝率は.8823。最高の状態で竜王戦開幕を迎えたと言っても過言ではない。「他棋戦を戦っている時にも頭の片隅にはいつも藤井さんのことがあり、(他の対局でも)作戦面も意識しながら指してきた」と好調の要因は藤井竜王に向かう気持ちだったことも明かした。
しかし、直近に行われた王座戦五番勝負で藤井竜王が見せた勝ちっぷりは佐々木八段にとっても衝撃的だった様子。研究の鬼・永瀬拓矢九段(30)が用意した作戦を吹っ飛ばすほど、他を寄せ付けぬ圧倒的な将棋に「本当に強い勝ち方をしていて、藤井竜王の強さを再確認した」と気持ちを引き締めたという。
藤井竜王とは過去に6局の対戦成績があり、佐々木八段は2勝4敗だ。勝利した2局は藤井竜王のデビュー以来30連勝を止めた2017年度の第30期竜王戦決勝トーナメント2回戦と、前期のNHK杯決勝とあり、いずれも勝負所で“一発”を入れてきた実績があるが、「藤井竜王と他の棋士とは、対策の仕方が違う」と準備段階から違いがあることを強調した。
大まかに「“最善に寄せていく”か、“人間の曖昧性を突くか”という感じ」とふたつの方向性があるというが、「そのどちらで行くかは難しいところ。自分の力が出る展開はどちらか。8時間の持ち時間も経験したことがないので、そういうところも意識した作戦選択になると思う」と長い番勝負の戦いを見据える。
王座戦五番勝負で痛感させられたという「終盤の差をどう埋めるか」。拭いきれない不安と課題も口にしたが「追い詰めた方が面白いと思うので、そういう展開にしたい」と明るい表情も。「どのくらい消耗するのかもわかりませんが、藤井竜王と2日制の将棋を指せるのは良い経験。自分の最善を尽くしたい」と語り、闘志を燃やしていた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)