そんな中、費用を抑えながら芸術・スポーツ・語学など、子どもに合わせた“理想の教育”を受けられるというアメリカの制度が注目されている。
その名も「チャータースクール」。
チャータースクールとは、アメリカで運営されている公立・私立に続く新しい学校制度。保護者や教師など学校の開設を希望する人が地域の行政教育機関から認可を受け、公費で運営される公設民営型の学校だ。
公費の運営で学費が無料であるため教育費を抑えられるが、テストなどで学校全体として一定の成果をあげなければ認可が取り消されるという。
◼️理系や語学に強いチャータースクールも
チャータースクールの特徴は費用面以外にも。
アメリカの教育事情に詳しいジャーナリストの福田恵子さんによると、保護者と教師が運営しているため、カリキュラムに柔軟性をもたせて芸術やスポーツに振り切った学校もあれば、理系や語学が強い学校も多く、進学実績が優秀な学校も多いという。
日本ではまだ浸透していないが、今後広まっていく可能性があると福田さんは語る。
「チャータースクールは一種の公立だ。日本の自治体に教育に関心のあるトップがいれば結果は変わってくる」
◼️人気も成果も出せないチャータースクールは
教育経済学を専門とする慶應義塾大学の中室牧子教授はチャータースクールについて「地域の実情や生徒の属性に合わせて教育内容を考えられる点は素晴らしい。特にアメリカはダイバーシティも高く、人種も様々だ」とした上でチャータースクールの“成果”についても説明した。
「アメリカにおけるチャータースクールの歴史は長く、研究も積み重なっている。分析によると『学力』という面では期待ほど大きな成果をあげられていないようだ。とはいえ、人格面への影響や卒業した後の就職・収入などについては今後の研究が待たれる」
アメリカでは、人気のチャータースクールもある一方で、人気がなく成果も出せず認可を取り消されてしまう学校もある。この“シビアな戦い”の背景について中室教授は「学校間で競争させてダメなら潰す」というアメリカの方針があるという。
「そもそも、アメリカと日本では教育の考え方は異なり、アメリカでは学校間で競争させる特色がある。そして、成果を出せなければ市場から退場しなければならないのだ」
アメリカの学校間の競争に関しては「バウチャー」という政策もある。
「バウチャーは経済的に豊かではない子どもたちが私立学校に行くための学費の一部を援助するというもの。結果、私立と公立の間で競争が起こる。その裏側には学校間で教育方法などを切磋琢磨し合うことで生徒たちの能力を高めていこうという思想があるのだ」
◼️日本唯一のチャータースクールとは
実は日本にもチャータースクールは存在する。
大阪府立水都国際中学校・高等学校は日本の中高一貫校では初めての「公設民営学校」であり、国際ビジネスを支える人材育成のために、国際理解協力と英語教育に重点を置いている。
なぜ大阪なのか?
理由は、日本の産業の国際競争力を高め、国際的なビジネス環境を作ることを目的とされた「国家戦略特区」に指定されているからだという。
日本のチャータースクールについて中室教授は「日本には『特区』や『教育課程特例校』という仕組みがあるので、地域の実情や生徒の事情に合わせた教育が可能だ。四角四面に同じ教育をやるのではなく、このような取り組みも出てきている。今後は特区の中で行われている様々な取り組みについての効果検証を経て他の地域でも広がっていく可能性がある」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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