親の劣等感を子どもで払拭する“受験後遺症”
【映像】受験後遺症の人が口にしがちな「言葉」と「特徴」
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 最近ネットで話題となっているワード、「受験後遺症」。福岡にある人気学習塾では、これをテーマに高校生のクラスでのグループディスカッションが行われた。講師が「最上位しか勝ち組の意識を持てない。それ以外の人はみな負け組意識を持っている」と語るように、受験戦争が激しかった昭和の学生には、敗北したコンプレックスや「自己肯定感の低さ」を大人になっても持ち続けてしまう人がいるという。

【映像】受験後遺症の人が口にしがちな「言葉」と「特徴」

 「受験後遺症」の言葉を生み出したのは、この塾の経営者でもある鳥羽和久氏だ。「劣等感を大人になっても抱え続け、今の子ども達に対して『勉強ができる人が偉い』という価値観を、知らず知らずのうちに押し付けてしまう」と語る。

 そうした親たちが、子どもに古い価値観を押しつける“負のループ”が問題になっている。親の思いに巻き込まれ、「親の夢が私の夢みたいな。考える力を失っているようで苦しい」と複雑な気持ちを抱く子どもも。

 「よかれと思って…」。親の思いを子どもの人生に託すことの是非について、『ABEMA Prime』で考えた。

■「子どもに言いながら、自分の不安だと気づき始めた」

 4人の母親で、鳥羽氏の塾に2人の娘を通わせていた柴田由香里さん。自身の学生時代に「受験競争」と距離を取ったことで、“受験と向き合わなかった”というコンプレックスを抱えている。また、最終学歴が「専門学校卒」であることに対する劣等感から、「無意識のうちに受験後遺症を抱えていた」と語る。

柴田由香里さんの長女の事例(柴田さん、右下)
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 柴田さんの長女(大学生)は、両親や祖父から、絶対に「〇〇高校」「〇〇大学」へ行けなど学校を指定され、特に祖父が厳しく人生の進路を決めつけてきたという。長女には強い反抗心や怒りが芽生えたほか、無意識に親戚の子や周りの友達の学歴や進路が気になり、自分らしさを失いかけたこともあるそうだ。

 柴田さんは「子どもが進路を選ぶ時、“自分の経験値”からしか物事を見ていないと気づいた」と振り返る。「私は親から『勉強しろ』と言われず、後遺症はないと思っていた。しかし、長男が専門性のある大学へ行こうとした時に、『一般の学科じゃなくていいのか』『4年制の方が選択肢も広がる』と言ってしまった」。

 長男の進路選択を「自分の経験だけで決めていいのか」と感じた柴田さんは、徐々に「子どもに言いながら、自分の不安だと気づき始めた」という。そんな中、長男は自分の道を選んだということだ。

■「自分の価値観を子どもに伝えようとする勇気のある親が減った」

 鳥羽氏は学生時代、中学受験を目指す男子の家庭教師をした時に、その子のストレスを目の当たりにしたという。「自宅の2階から物を投げて、走っている車に当てようとする状態だった」。しかし、母親にとってそれよりも重要なのは書き順を間違えること。「お母さんと話すと、実は受験にあまり詳しくなく、とにかく分刻みで子どもを管理していた。家庭を『休息の場』ではなく『管理する場』としてしまうと、うまくいかない」と語る。

「受験後遺症」、その悪影響(鳥羽和久氏、左下)
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 「受験後遺症」の悪影響として、勉強や学校が嫌いになって、不登校になり、教材などを破棄してしまうケースがある。また、強度の親依存になり、何事にも目標や自主性を持てなくなる、親の期待に応えるためにカンニングなど不正行為をすることもある。

 一方、パブリックテクノロジーズ取締役CTOのTehu氏は、受験期に厳しい親の目があったことを振り返りながら、「不安や学歴社会が『思い込み』ならよいが、社会は結構そうなっている。大人はなんとなく気づいているからこそ、子どもへの親心からアドバイスする。そうなると、子どもは反抗しづらい」との見方を示す。

 これに鳥羽氏は「親は“自分の不安”で世界を作り、そこに子どもを招き入れてしまう」と指摘。「子どもごとに向き・不向きがあり、『この子は進学コースに行けるが、好きなことやっていい』と判断できている親を見ると、自然だと感じる。小学・中学受験の段階では、親がある程度判断するほかないが、そこで無理やりさせると後遺症になりがちだ」と説明した。

 ブレイクダンサーのShigekixは、「コミュニケーションが全て」と考える。「親からの押しつけになると、愛情があってもプレッシャーになる。自分の母は、『一流大学に行くのが目的ではなく、目標を決めて達成するその努力を評価するものだ』と。成功体験の積み重ねでレベルアップするという“考え方”を教えてくれた。小学生の時に月1回の海外遠征があったが、『自由にしてる分、みんなと同じことをやらないといけないよ』とも言われていた。それは押し付けられている感覚ではなかった」。

 これを受け、鳥羽氏は昨今の「価値観を押しつけるのは良くない」という風潮に問題提起する。「考え方を教えることを避ける親が多い、つまり自分の価値観を子どもに伝えようとする勇気のある親が減った。それは子ども自らが考える力を身につける土台になる」とした。

■「親もどんどん変わっていかなくてはいけない」

学歴社会は是か非か?鳥羽氏の見解
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 好きなものを見つけられずに、なおかつ勉強も得意とは言えない子どもたちも多い。鳥羽氏は「そういうグレーゾーンの人が、“受験後遺症”を抱えてしまう現実がある。10歳ぐらいまでは親がナビゲートする必要があるが、それを超えたら基本的に子どもの主体性に任せるべきだ」とアドバイスする。

 また、「俯瞰すること」も大事だとし、「『私がこういう間違いをしているから、子どもがこういうことをやってしまっている』と気づくことができたら、絶対に変わってくる。親もどんどん変わっていかなくてはいけない」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)

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