関東出身・20代 つむぎさん(仮名)
「14歳です。妊娠しました。助けてください」「妊娠が発覚し相手に伝えたところラインをブロックされ困っています」後を絶たない、全国から寄せられるSOS。
そんな孤独な妊婦たちをサポートする宮城県仙台市の支援団体「キミノトナリ」。代表の東田美香(ひがしだ・みか)さんは「ご相談くださる方は、95パーセントぐらいは中絶希望。下は13歳で、上は40代まで。親や友達に言えず、パートナーももちろんいない。本当に頼る人がいない」と語る。
誰にも相談できず、思わぬ形で孤立に陥ってしまう妊婦たちの現状と、支援団体の活動の実態に迫った。
「産んでも面倒は見ない」と言われ…誰にも頼れず孤立する妊婦
関東出身の20代・つむぎさん(仮名)は、妊娠9カ月で1カ月後に出産を控えていた。家族や親せきとは疎遠で、3年前に友人を頼って仙台に移り住んだ。程なくして男性と交際し、別れた直後に妊娠が発覚。その時、すでに18週目だった。
つむぎさんは「(交際相手とは)もともとあまりうまくいっていなくて、今も連絡は取れるんですけど、お付き合いはしていないです。22週に入ったら(中絶は)もう駄目なので、決められるまでが本当に短かった。ずっと泣いていた」と振り返る。
「産んでも面倒は見ない」男性からそう言われたが、思い悩んだ末、産むことを決意した。つむぎさんは「堕ろすとなると火葬までする。火葬して骨を拾ってというのを聞いて…できないなって」と複雑な心境を語った。
2020年に「キミノトナリ」を設立、「妊娠SOS」を運営
精神的に不安定な状態が続く中、出会ったのが「キミノトナリ」だった。代表の東田美香さんは4年前に、友人の弁護士や助産師ら15人で設立。妊娠に関する相談窓口「妊娠SOS」を運営している。
誰にも頼れず、追い込まれていく女性たち。最悪の場合、子どもを殺めるケースもある。国の調査では、2021年度までの18年間で176人の赤ちゃんが遺棄されたり、暴力を受けたりして、出産当日に亡くなっている。
「キミノトナリ」ではSNSでの相談を受け付けていて、これまでに寄せられた相談は、延べ2300件だという。アドバイスだけではなく、県内の相談者には病院や行政窓口への付き添いなど、直接的なサポートもしている。
不妊治療を経て妊娠も出産前に離婚…
宮城出身・当時25歳 ゆうこさん(仮名)
3年前、東田さんが初めて出産を支援した宮城出身のゆうこさん(仮名・当時25歳)。関東で夫と暮らしていて、不妊治療を経て妊娠したが、出産前に離婚。
ゆうこさんは「(実家の母親から)『出て行ってほしい』と言われて。まさか1人で育てるとは想定していなかったので、これからどうやって生活していけばいいのかと毎日不安でした。頼れる人もいない、行く先もないので、そういう日々がずっと続くのかと心配で(精神的に)いっぱいいっぱいだった」と当時の心境を語る。
幼少期に、育児放棄を受けた経験から実家の母親に頼ることはできなかった。妊娠6カ月で帰る家がなく、車中泊をする日もあったそうだ。そんな中、相談を受けた東田さんは出産できる病院と住む場所を紹介した。
「キミノトナリさんに出会って、1週間以内に家(実家)を出ることができて、スムーズに普通に暮らせるようになった」(ゆうこさん)
出産後は、シェアハウスで暮らし、同居人たちも支えた。「食事の用意をしている時に、赤ちゃんが泣いていると、必ず誰かが抱っこしてくれるので助かっています。(みんなのおかげで)心のゆとりが持てます。頑張る理由になっています。もう毎日可愛くて仕方ないです」と話した。