■母親との“閉じられた世界”で事態悪化も

かんしゃくとは
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 海老名市で起きた事件は、倒れている子どもを帰宅した父親が発見。後に死亡が確認され、母親も自死をはかっていたが、父親がこれを阻止した。母親が子育てに悩んでいたものの一つと言われているのが「かんしゃく」だ。泣く・叫ぶ・暴力・物を投げる、といった行動で、通常は5歳頃を境に減少傾向になるが、ゲーム動画視聴を制限される、受験ストレス、発達障害(ASD)、他責思考など原因は様々で、その程度もかなり幅があるという。これまで250人以上の不登校・引きこもり児童と接してきた「T&M」代表取締役の安村俊毅氏は「(海老名市の)事件の詳細はわからないが、類似の事例として、追い込まれている親御さんはかなり多い。今回のような事件にまで至っていないが、相談を受けることもすごく多い。今回気になっているのは、児童相談所と臨床心理士に、どういう内容で相談していたかを、きちんと分析することが必要」と述べた。

 子どもの不登校をきっかけに離職する母親が多いとも言われ、その負担はかなり大きい。「不登校になると社会との接続が切れた状態。いわゆるライフチャンスが減っている。友たちとも気まずくて繋がれず、先生ともなかなか顔を合わせない。そうしてなかなか外に出られなくなると、子どもと親御さんだけの閉じられた世界が形成されてしまう。『母子カプセル』とも言うが、全てお母さんの責任になってしまい、お母さんがなんとかしないといけないというプレッシャーがすごくかかっている。実際に相談が来る時も、お母さんが多い」と述べた。

 安村氏は小学生から高校生までを対象に面談、親とともに事態の解決に取り組むが、時にはかなり危険なケースにも遭遇した。面談のために自宅を訪れた際、子どもが壁に開けた穴を見かけることは多いが、過去に「刃物が出たケースが2例あった」という。この時は、とにかくゲームにハマってしまい、好きにゲームをやらせない親が自分を虐待していると言い続けていたため「そうじゃないという話をしたら、カチンと来てしまい、刃物を出してきた。なんとか状況を収めた」というが、防弾チョッキの上からナイフで刺されたこともあったという。

■進む核家族化、大きくなる母親の負担
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