■夫の死が美談として消化された岡真裕美さん
夫の死が“美談として消費された”と感じている岡さんは、当時の報道について「事故が起きた原因や再発防止に繋げてほしかったが、夫は責任感の強い人だったとか、人となりがフューチャーされる報道が多かった。それに違和感を持ったのと、近隣の方への取材で、我が家の個人情報が全部記事にされて、特定されたことが非常に怖かった」と振り返る。
取材を受けたときには、本当の思いを語るもカットされたことがあったという。「当時、5歳と2歳の子どもを残された私は1人で子育てするので、すごく大変だった。頼っていた夫がいない、収入面も安定が難しい。そういったことも訴えていた。また、他の助かった子どもたちに対する恨みつらみはゼロじゃないと話したが、取り上げられなかった」。
取材を断ることはなかったのか。岡さんは「夫の事故があって、警察署で遺体を確認したとき、その門のところにマスコミの方がなぜかいた。お通夜、葬儀にも取材の依頼があって、そういう気分でもないので、親族を通じてお断りをしていた」と答えた。
しかしその後も、夫の死を乗り越えた研究者といった更なる“美談”に苦しむことになる。研究者となった経緯について、「自分の気持ちを消化するために大学院に進学して、研究者という道に進んだ。研究していく上で、こんな社会課題があるのかと考えて、新たな道に進んだだけなのに、『夫の死を乗り越えた奥さんが、意志を継いで頑張っている』みたいに言われてしまい、私の思いとは違う伝えられ方をした」と明かした。
■震災9日後の救出に“奇跡”と報じられた阿部任さん(30)
