■余命1年…母の思い「わが子は誉れ」

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余命1年を宣告された誉君

 みんなで14歳の誕生日をお祝いした9カ月後、厳しい現実が突き付けられる。医師から「余命1年」と宣告されたのだ。

「終わりに向けてというか……最期をどう過ごさせてあげようという。とても幸せだったので、忘れていました。寿命が短いということを忘れるぐらい…いろいろなことを家族で一生懸命やってきた。先生から(余命の)話をされた時も『何でだ、何でだ…1年なんて早い』と思った」(富美さん)

「自分が泣いて、死ぬほど泣いて誉の病気が治るなら、くそほど泣くけど、それで病気は治らないので泣きたくない。泣く時は、変なイメージをしている時だけ。亡くなるとか。それは終わってからでいい、すべてが…と決めている」(充さん)

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桜が咲く公園での誉君と家族

 桜が咲き誇る公園で、家族みんなで残された大切な時間を過ごす。三色団子を食べながら、楽しそうに春を感じている様子の誉君。「やっぱり外が好きなんだね」と富美さんも嬉しそうだった。

 そして余命宣告から3カ月が経ち、15歳を迎えることができた。「にぃに!ケーキ、フーするよ」「おめでとう」と15本のロウソクが並んだ誕生日ケーキをみんなで囲んでお祝いをした。

 15歳の冬、「余命2カ月」の宣告をされた両親は、そのことを2人の弟に伝えた。

「『そんなに時間がないみたい』『長いこと(一緒に)いられないみたい』と。柚稀はオイオイ泣いていたんですけど、蒼心は全然泣いていなかった。『楽しく過ごそうね』と泣きながら言ったら、『まず泣くのやめなよ』と(蒼心に)言われた」(富美さん)

 間もなく余命を超えて迎える16歳の誕生日。その日、美容院に向かう3兄弟の姿があった。顔馴染みの担当美容師が「周りを幸せにしてくれる。ほまほまは、癒しキャラだよね」と言い、散髪が終わると誉君はにっこりと笑っていた。

 16歳の誕生日の日、柚稀君のピアノ演奏に合わせて、家族みんなで「ハッピーバースデートゥユー」を歌い、誉君を祝っていた。

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富美さんと誉君

「16歳になったと思った時に、今まで誕生日が来るのが怖いと思っていた時期もあったし、『誕生日が来た、もっと体調管理するぞ』と思っていたけど、けさは家族のそばにいてくれて『ありがとう』と思った。きょう初めて、感謝の気持ちしかなかった。本当に『誉れ高い』、私にとっては素晴らしい子」(富美さん)

■「もう少し一緒に長く生活したかった」
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