見た目は中堅のおじさんなのに、実は28歳(小説版)だったという衝撃……。「機動戦士ガンダム」にわずか1話のみの登場ながら、強烈なインパクトを残した男がいた。ジオン公国軍のシャリア・ブル大尉(CV:木原正二郎)だ。彼はギレン・ザビ総帥(CV:田中崇)とキシリア・ザビ少将の間で板挟みとなり、シャアの部隊に編入された末に、アムロ・レイに討たれた悲しきニュータイプだった。
【映像】シャアの思惑を感じ取ったシャリア・ブル(13分45秒ごろ~)
ニュータイプといえば、続編にあたる「機動戦士Zガンダム」の主人公カミーユ・ビダンがそうだったように、若く情緒が不安定な者も多い。しかし、「木星帰りの男」と紹介されたシャリアは、落ち着き払った雰囲気を放ち、その特異性が際立っていた。
シャリアはニュータイプの能力とされる遠距離からの敵捕捉能力、先読み回避能力に長けていただけでなく、人の思考を読み取る力を持っていた。本人は「人より勘がいい程度」と語っていたが、ギレン総帥はその異能を見抜いていた。そして、「人の心を覗きすぎるのは己の身を滅ぼすことになる。ただ、私が君をキシリアのもとにやることの意味は考えてくれ」と釘を刺したうえで、キシリア配下のニュータイプ部隊に送り込んだ。
一方、報告を受けていたキシリアはシャリアに同じくニュータイプのララァ・スン以上に期待を寄せ、シャアの部隊へと編入した。ニュータイプ専用モビルアーマー・ブラウ・ブロでの出撃前にはシャアとララァとも会うと、シャリアはシャアの考えを読み取ったかのように「私は大佐のような方は好きです。お心は大きくお持ちいただけると、ジオンのために素晴らしいことだと思われますな」と話していた。シャアもシャリアがギレンとキシリアの間で板挟みになっていることを察したようだった。
一方でシャアは思考を読むニュータイプを自分のそばに置きたくなかったのかもしれない。シャリアを単機で出撃させた理由を問うララァに、シャアは含みのある返答をした。ララァは納得していない様子だった。
アムロとシャリアのニュータイプ同士の戦いは他を寄せ付けない壮絶なものになったが、アムロがブラウ・ブロ本体の位置を掴むと、急接近して一撃で撃破。この戦闘は、『ガンダム』のテーマであるニュータイプの可能性と悲劇、そして戦争の非情さが凝縮されたものとなった。
シャリアはシャアとの会話の中で、「我々がニュータイプなら、ニュータイプ全体の平和のために案ずるのです」とその先の未来について語っていた。もし戦争のない世界だったら、ニュータイプはどのように扱われていただろうか、考えずにはいられない。
アニメ「機動戦士ガンダム」は1979年4月から1980年1月まで放送されたサンライズ制作のロボットアニメで、富野由悠季監督が手掛けた作品。“リアルロボットアニメ”という新ジャンルを開拓し、以後のアニメに多大な影響を与えた。放送当時の視聴率は振るわなかったものの、再放送や劇場版の公開で人気が急上昇すると、「ガンプラ」ブームも生まれるなど空前のヒットに。現在に至るまで数多くのシリーズやスピンオフなどの派生作品が制作され、高い人気を誇る。
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