■パックン「批判の全てが偏見ではないかもしれない」

 日本腎臓学会の前理事長であり、川崎医科大学 高齢者医療センター 病院長の柏原直樹氏は、偏見の要因として「知識不足と寛容のなさ」を挙げる。「腎臓病になれば、食事療法と生活管理が必要になる。うまくいかなければ腎機能の低下が加速することは事実だが、それが主な原因にはならない。糖尿病の場合も、同じような食生活や運動不足をしている人が、同じように発症するわけではない。遺伝的な要因などもあり、自分でコントロールできないもの。偏見の対象になってはいけない」。

透析患者の年齢 性別
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 中には「健康リテラシーがない患者」がいるものの、「できない理由がある人もいる」という。「自堕落と思われるような生活にも、何かしらの要因がある。そこを見ずに、勝者の論理で『自己責任だ』と決めつけるのは良くない」と語る。

 Miiさんも「外部から『100%自己責任だ』と断定できる糖尿患者はいないのでは」との考えだ。「遺伝などの要因があるなかで、『自己責任だ』『悪くない』と区別することは誤りに近い発想」。偏見の解決策として、「『生活習慣病』のネーミングを改めるのはどうか。現状は“生活習慣がダメだった人”への烙印になってしまっている。『生活習慣に気をつけよう』とする指針は正しいが、それが結果を100%コントロールするものではない」と提案した。

 全国腎臓病協議会によると、透析にかかる費用として、外来血液透析の場合には約40万円/月がかかり、自己負担は1カ月1万円が上限となる(一定以上の所得のある人は2万円が上限、自治体により異なる)。また厚生労働省によると、腎不全患者の医療費総額は、年間約1兆6000億円で、全医療費の約5%にのぼる。

 パックンは、「『健康でいる努力を怠った人に税金を月40万円かけている』という批判は、すべてが偏見ではないかもしれない」と持論をぶつける。「家を建てる時には、周りに燃え広がらないように防火性の高い建材を使うよう、建築基準で定められている。同じように『社会保障の対象にならないような生活をおくって』という基準を定める議論があってもいいのではないか」。

 これに柏原氏は「アジアのとある国では、腎不全になっても7人に1人ぐらいしか透析を受けられず、その他の人は亡くなっている。日本は、腎不全になっても公的な医療費で長生きできる、ある意味非常に幸せな国になった。ここには患者会の努力があり、勝ち取った権利を大事にしたい」と返した。

■透析は「延命治療」か
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