■「人の期待に応える人生をもう諦めた」

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埼玉県・横瀬町

 東京を離れて、もうすぐ3年になる眞理さん。週に1度のペースで拠点を変えることもあるという。この日、やって来たのは埼玉県の山間にある横瀬町。滞在するのは、コワーキングスペース付きの宿泊施設。月額およそ4万円で、登録されている全国の拠点が利用できる。眞理さんは、この施設の常連だ。

 コワーキングスペースで作業をする眞理さん。提出していたデザインに修正の依頼がきて、また1から作り直すという。AIを表現するアイコン画像のデザインに苦戦し、悩んだ末、施設の滞在者やスタッフの元へ向かった。会社員とは違い、組織に属さないため、コミュニティの仲間が相談にのってくれるそうだ。

 そして次に向かったのは北海道の島牧村。空港からバスや車を乗り継ぐことおよそ5時間、小さな村の温泉宿に到着した。この日から1週間、眞理さんの住まいとなる。実は、この村の仕事を手伝うことで宿泊費や交通費が補助されるというサービスを利用して、はるばる訪れていた。

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宿の風呂掃除をする眞理さん

 朝から始まった宿の風呂掃除を終えて、午後からは部屋でフリーランスとして本業のデザインの仕事に取り掛かる。作業に区切りをつけて、散歩に出かける眞理さん。「幸せ。静かだし、情報が少ないし、全然気遣わなくていいし。こういうところにいる方が、明らかに私が穏やかに生きている自覚がある」。

 会社員時代、苦い経験をしたからこそ、いま最も大切にしているのは“自分に正直に生きること”。「“普通”に会社員として働くとか、“みんな”ができていることが、ものすごく苦痛に感じてしまって、続けることができない」。

 眞理さんは、堰を切ったように“この道を進むワケ”を語り始めた。「頑張れば、みんなが期待している自分になれるんじゃないかなって、なんとなく思っていて、それ(会社を辞める)までは。でも実際に体調やメンタルに出て、無理だってわかって『私は物理的に無理なんだ』みたいな。私がやりたくないからとかじゃなくて、もう無理なんだなって思って。そのときに結構ショックを受けて…。人の期待に応える人生をもう諦めた。無理だったから」。

■両親の価値観、自分が選んだ道
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