ヒリヒリする展開で試合が大きく動いたのは、1ラウンド残り30秒を切ってから。玖村が踏み込んで左を振って出ようとしたその瞬間、コンパクトだが力強い兼田の左ストレートがカウンター気味に玖村の顔面をとらえる。

 そこまでの力感はなかったが、まともに被弾した玖村は大きく仰け反って後退。まっすぐに下がってロープを背負った玖村の足元はフラフラだ。たまらず崩れ落ちた玖村。ダウンカウントが進むと「何が起こったのか?」といったように驚きの笑顔を浮かべる。

 すぐさま立ち上がった玖村は自らのコーナーに戻るも、千鳥足。コーナーに背中を預けるようにカウント8まで聞いてファイティングポーズ。ラウンド残り10秒で試合に復帰するも、兼田が左右の連打を一気に畳みかけて沈めて見せた。ロープに吹っ飛んだ玖村はレフェリーに抱えられるようにしてゴングを聞いた。

 圧巻のKO劇に「強い、兼田…強すぎた」と実況は興奮。さらにファンからも「これが空手の一撃か」「破壊力やば」「ちょっとレベチだった」と驚きの声が殺到する事態に。

 解説を務めた佐藤嘉洋は圧巻のKO劇に対して「玖村はなぜ…いま今日、試合しているのかも曖昧になっているのでは。『いま、試合前じゃない?』みたいな。記憶ってそういう風に飛んでいく。朝起きてからの記憶がないとか、そういうパターンもある。これぐらいだと、試合前後の記憶がバンと消し飛んでる。『いまから試合だろ?』って気分になることもある」と玖村のダメージを慮った。

 その後、マイクを握った兼田は「玖村選手とは地元堺で一緒で、昔から知っていて兄も負けている強い選手。ここは絶対に勝とうと思っていました。あと、会場に来ていましたね。タイトルに勝った方とやりたいのもあるんですけど、軍司選手の名前も挙げていたので、どうですか? やりましょう。今日の試合、どうでしたか? 軍司選手。ずっと追いかけてきたんで、いつか越すと思ってやってきたので、僕らでやって勝った方がタイトルでどうでしょうか?」とリングサイドで試合を観戦した軍司に向かって挑戦状をたたきつけた。

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