■男性被害者「弁護士でも警察でも信じてもらえない」

Nさん
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 離婚して現在はシングルファーザーのNさんは、配偶者から「顔を殴る・脚を蹴る」「コップなどを投げつけられる」「子どもの前でも暴言・暴力をふるう」「包丁を自分自身に向ける」などの行為をされた。「基本的には日常のささいな口げんかだが、どんどんエスカレートして、ものをぶつけたり、タックルされたり、暴言を吐かれたりする」。

 普段は仲が良かったものの、「感情の起伏が激しく、途中から自分でもコントロールできなくなって、怒りに任せて手や足が出る」ようになった。「警察や弁護士に相談したが、最初は信じてもらえなかった。日記や、被害を受けているときの録音を聞いてもらって、ようやく信じてもらえた。男性のDV被害を信じてもらえる材料として、録音は重要だ」と語る。

 男性DV被害者への支援を行っているNPO法人「ステップ」理事長の栗原加代美氏は、「男性が被害者になると考えない、ジェンダーバイアスがある」と指摘する。「『女性が仕えるべき』『男性が加害者』といったイメージがあり、なかなか周りも動かない。女性に『本当はあなたが被害者ではないか』、男性に『あなたが加害者だろう』と言うケースも多いはずだ」。

■新たな被害者を出さないためには
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