ヨーロッパが果たすべき役割とは?

慶應義塾大学の廣瀬陽子教授
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 さらに廣瀬教授は「バイデン政権の時の支援は無償で行われるという前提だった。それが政権が変わった途端に『返済しろ』と態度が変わるのは完全にあり得ないことだ」と強調した。

「政権が変わっても国家の方向性が変わらないということが国際関係の信頼の礎になってくるが、こんなことをされると、もう二度とアメリカを信頼して何らかの約束はできなくなってしまう。しかも、力のある米露が“いいところ”をウクライナから全部収奪してこの戦争が終わるかもしれないという展開になりつつあることも今後国際政治において信頼関係も築けない、そういう非常に殺伐とした今後に繋がる可能性が高くなってしまう」

 ヨーロッパはどんな役割を果たしていくべきなのか?

「ヨーロッパもトランプ大統領の顔を潰さないような形で、いかにウクライナの問題に引き戻すか、そして、ロシアに利する形ではなくウクライナをサポートする形でアメリカを動かす。そのためにヨーロッパも今必死だがなかなか難しい。 “トランプシンパ”のようなハンガリーやイタリアのメローニ首相、セルビア、スロバキアなどの国もあってなかなか一つにはまとまらない。ヨーロッパの結束をまずきちんとした上でアメリカに圧力をかけていく。また、和平とセットでウクライナの安全の保障が非常に重要な問題となるわけだが、トランプ大統領は一切関与しない姿勢で『ウクライナの安全の保障はヨーロッパの問題だ』と言っている。アメリカとウクライナの和解、それがないと、結局状況はどんどんロシアに利する形になる。まずは、和解をするためにヨーロッパがウクライナをサポートし、アメリカの状況を少しでもヨーロッパに近づけていく必要がある」

 アメリカとロシアが接近するリスクについては以下のように述べた。

「非常に大きなリスクがある。基本的に、やはりアメリカもロシアも“大国政治の国”であって、ウクライナのことはもう何にも考えていない。『ウクライナのような小国ははっきりと何かを主張するべきではない』という立場をアメリカはとっており、またロシアは『そもそもウクライナなんて国が成立すべきではない』というような立場をとっている。そのため、ウクライナの利益を完全に無視した形で米ロが好き勝手をやっていく可能性が非常に高く、今この想定されている和平の中で、ロシアはどんどん自分の主張を強めている」

「例えば、最近は『この戦争の根本原因をなくす』であるとか『制裁を解除しろ』というようなことも言っている。実際、この制裁解除は、世界のビジネス、社会が割と望んでいることでもあり、ビジネスに非常に関係が深いトランプ大統領がもうこの制裁をやめてしまう、そしてウクライナの復興に使おうとしている凍結資産もロシアに返済してしまう可能性がある。するとロシアは“痛みなし”で『全て取りたいものを取って戦争が終わった』ということになりかねない。アメリカとロシアの関係がやはり世界に与えていく影響は非常に大きくなり、ロシアにとって都合のいい形になれば、今後、中国などいわゆる専制主義国家がますますやりたいことをやってしまう、いわゆる自由民主主義的な価値観がどんどん損なわれていく可能性が高まる」
(『ABEMAヒルズ』より)

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【映像】「気持ち悪い」 小学校隣接の公園で性的ビデオ撮影
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