■叶原さんが考える問題点
「老障介護」の問題点として、叶原さんは、重度障害者が安心して暮らせる「生活の場」が明らかに足りておらず、それを支える制度が実態に追い付いていないことを指摘。また、行政など相談にのる機能が十分でなく脆弱であるため、解決に結びつかず、家族が地域の中で孤立していると考える。
施設長としての経験から、「70〜80代の親が、誰にも頼らず介護し続けているが、ある日突然、心身ともに限界がやってくる。行き場がない、相談にも乗ってくれない孤立が、社会問題として浮き彫りになっている」との見方を示す。
国は現在、「地域移行」をすすめている。これは、障害者個人が市民として、自ら選んだ住まいで、安心して自分らしい暮らしを実現すること。障害者本人の意志や選択が尊重される支援の仕組みと、選択肢を作ることが重要だとされる。
しかし、介護現場とはギャップがあるようだ。叶原氏は、「国は『入所施設をこれだけ減らす』と数値目標を定めているが、待機者が多いという矛盾。政策の理念は正しいが、入所施設に問題があるように感じさせかねない。入所施設の職員や利用者、そして全国2万人以上いるという待機者の実態を見てほしい」と訴える。
受け入れ先としては、グループホームなども存在するが、「職員の配置基準が入所施設よりもさらに低い。障害の重い人や医療的ケアが必要な人がグループホームで暮らすのは、相当ハードルが高いのではないか」。人手不足をICTでカバーする考えについては、「利用者とのコミュニケーションは、機械に変えられず、知識と経験が必要だ。福祉現場で働く職員の処遇改善も、国には強く求めている」という。
■アレン様「介護施設で働いている方は10年前から問題を指摘している」
