大衆ウケを狙う暴論にも思えるが、実際にやるときはやる。それがトランプ流のマッドマン・セオリーだ。「アメリカ合衆国のように国力が大きい国は、相手を威嚇しようとしたときにかなりうまく行く場合が多い。『どうせ脅かしているだけでやらないんでしょと思っていたら、本当にやってくるつもりでは…』と思う場合では、相手の威嚇のようなものも、深刻に受け止めないといけない」と篠田氏は話す。
その典型例が、ウクライナのゼレンスキー大統領との口論だ。ただの口論で終わらず、一時アメリカは本当に軍事支援を停止。結果的にウクライナ側は、トランプ氏が主導する停戦案に合意し、ロシアのプーチン大統領の出方次第となった。
第一次トランプ政権下の2017年にも、マッドマン・セオリーの象徴と言える出来事が起きていた。中国の習近平国家主席を、フロリダ州の別荘に招待したのだが、トランプ氏はその晩餐会の最中にトイレにでも立ったような雰囲気で席を外し、戻ってきて「今シリアに向け、空爆の指令を出してきたところだ」と話した。記者団はもちろん、習近平氏をも唖然とさせたと言われている。事実シリアへの空爆は行われ、ロシア側が侵略行為と非難する事態になった。テレビ朝日・外報部デスクの中丸徹氏は、当時を振り返り、「言い方を恐れずいえば、マフィアのやり方に近い。しかしこのやり方は、同じ共和党の大統領から学んでいる」と語る。
マッドマン・セオリーの“元祖”は?
