「大手集荷業者ではないところに20万トン回っただけ」

コメの主な流通経路
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“消えたコメ”について、稲垣氏は「大手集荷業者が集めているコメが例年大体220〜230万トンあるが、去年の12月時点で前の年と比べると20万トン少なかった。そのことを指して“消えたコメ”という言い方をして、それを悪徳業者が買いに来ているみたいな話に少し“尾ひれ”がついた。実態は、集荷業者から直接消費者へ、また農家直売などに流れただけであって、全農をはじめとするJA系統など大手集荷業者ではないところに20万トン回っただけだ。消えてはいない」と説明した。

 稲垣氏によると、価格高騰の原因は流通の問題ではなく「足りていなかった」ことだという。

なぜ需要を見誤ったのか?

最近のコメの需給動向
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 昨今のコメの需給動向については「令和6年産のコメの生産量は前年に比べて18万トン多い。『需要見通しは674万トン、生産は679万トンなので、足りている』というのが農水省の説明だった。しかし、実は令和5年産は生産が661万トン、需要は702万トンだったと上方修正されたので約40万トン不足しており、2年通算で見ると30万トンぐらい不足している。令和6/7年の需要も少し上振れする可能性もあるので、少なくとも30万トンから40万トンくらいはそもそも生産量が足りていなかった。これが、米価が上がっている唯一の原因といってもよい」と説明した。

 なぜ需要を見誤ったのか?

 稲垣氏は「長い時間軸で見てもらうとわかるように、需要量は毎年10万トンくらい下がる傾向にあると言われていて、これに合わせる形で生産をするように政策的に誘導していた。それが今回、失敗した。当初の需要は約680万トンで見ていたのに約700万トンに上振れてしまった。需要が上振れしたのは、コメの品質が悪かったからだ。需給予測の数字は『玄米ベース』であり、精米にするときに物が悪い(精米歩留まりの低下)と、よりたくさんのコメが必要になる。だから実需が増えたわけではなく、品質が悪いことによって需要が増えてしまったということがあり、今年それが起こらないのかはわからない。要因としてもう一つあるのは、皆さんが少しずつ買う量を増やした可能性だ。消費者のほか、特に中食・外食の業者に関しては一生懸命コメを先まで調達しようと需要が前倒しされてしまった可能性もある」と分析した。

5キロあたり3300円が適正価格?
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