■600兆円を超える内部留保、現預金は約300兆円
今年の春闘では賃上げについて高水準の回答が相次いだ。労働組合(3577組合)が要求した賃上げ率は平均6.09%で、6%を超えるのは32年ぶり。大企業を中心に満額回答が見られ、中には要求額を超える額を示した企業もあった。ところが2025年1月時点では、名目賃金こそ2.8%アップしているものの、実質賃金は1.8%のダウン。進む物価高の傾向に追いつけていない状況だ。全労連の事務局長を務める黒澤幸一氏も「結局、実質賃金は上がらず、昨年よりも物価の方が上がり幅として大きい。内部留保が増えているということは、企業の体力がついたということ」と、内部留保から労働者の賃金への転嫁を求めた。
千葉商科大学教授で経済ジャーナリストの磯山友幸氏は「内部留保が600兆円あるが、資産は必ずしも全部が現金ではなく、(現金・預金は)半分くらいだ」と説明。内部留保は、税金を払った後に企業が積んでいるお金。単純にそれからお金を配るのは簡単にはできない。内部留保を増やさないということは、逆に言うと利益を出さず、分配しましょうということになる。これだけ安全資産があるなら、そんなに儲けなくても労働者にもっと分配しましょうというタイミングに来ているというのはある」と解説した。
また、リーマンショックが起きた2008年度でも、300兆円に届かなかった内部留保が600兆円を超えた背景を説明。「時代性がある。ずっとデフレが続いてきたので、現預金でポンと置いておく方が、企業経営としてはある意味、正しかった。デフレだとお金の価値が高まるからだ。ただ、これからインフレで、その中でどうやっていくか。ちゃんと投資をしてリターンを取ることをやらなければならず、内部留保の増え方は鈍化すると思う」とも述べた。
■業績と賃金を連動させれば「下がる」覚悟も持つべき?
