■カリフォルニア大バークレー校教授らに聞く現地の状況
カリフォルニア大学バークレー校教授で理論物理学者の野村泰紀氏は、「何が起こっているかわからない、という状況。ビザの取り消しは、ひと月前はカリフォルニア大で44人、バークレイ校で6人だったが、おそらく今は倍以上いると思う。フランスの研究者が空港に降りた時に拘束され、政権批判をしたとそのまま帰らされた話もある。ビザ剥奪を大学側も知らず、学生によっては道を歩いてる時に覆面の移民局の人に囲まれ、車でルイジアナに送還される」と、現地の混乱を説明する。
ジョンズ・ホプキンス大学博士課程の佐々木れな氏は、「ワシントン界隈では、スピード違反や未成年飲酒など軽微な犯罪歴がある人で、いわゆる学生ビザのF-1や、卒業後1年もしくは3年働けるOPTを取り消される事態が発生している。ただ、過激派デモと評される活動に参加した人が必ずしも捕まっているわけではなく、選択基準が不明瞭なのが一番恐ろしい」と指摘。「おそらく犯罪者全体を罰したいのではないか」との見方を示した。
野村氏は「明らかに脅しをかけているようなやり口で、見せしめだ」とした上で、「一番ひどいと思ったのは、“教職員と学生の思想を監視して、政権に報告しなさい”という内容が入っていたこと。これを飲んだら大学は終わりなので、ハーバードは偉かった。とはいえ、税制優遇をなくされたりしたら、普通の大学は潰れてしまう。さらに、その後の政権の対応もめちゃくちゃで、送ったレターは“間違いで流出したんだ”と。ハーバードがのんでいたら、そんなことを言うわけない」と述べた。
ただ、アメリカ国民に大きな影響が及ぶほどではないという。「極端な例だとナチスになぞらえるような人もいるが、そこまでは全然いっていない。自国民がぶち込まれたこともあまりないし、命も直接は失われていない。市民の日常生活に影は落としているかもしれないが、別の世界になった感じではない」。
■「司法をものすごく軽視している」
