■海外では高評価の「SAKE」さらに広めるには?
元経産官僚で、現在は宇宙事業に携わる武井亜樹氏は、「海外での肌感覚では、日本酒の衰退は全く感じない。むしろ『SAKE(サケ)』として出回っているほどのブランド価値を持っている」と語る。「アメリカで行われた宇宙企業の国際会議で、一番長蛇の列ができていたのは、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)による“升酒”だった」。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「獺祭」を造る酒蔵の経営者との対談を振り返る。「『日本酒は味が薄い食べ物と合う』と言われて、なるほどと思った。なぜ日本酒が売れないかと言えば、食生活が外食中心になっているから。居酒屋はハイボールやビールを売りたいから、味の濃い料理にシフトする。そうすると、日本酒が合わなくなる」。
片山氏は以前、フランス料理店とともに日本酒ペアリングを企画したことがあるという。しかし、「ソムリエは『食前酒や食中酒、デザートにも合う』と言っていたが、料理店側が『日本酒よりもワインを売った方がもうかる』といった部分がある」ことがネックになったそうだ。
ソムリエとして各国の動向も調べている小林氏は、「食文化が日本寄りになりつつある」と指摘する。「温暖化現象により、長期熟成のワインができなくなってきている。そこで清酒が代用品になれるかもしれない。いまオーダーメイドで注文を受けているのは、レストランのスペシャリティーに合わせた日本酒だ」。そして、「パリから来日して、うちで醸造して、日光で片山酒造に寄る」といった旅行スタイルを打ち出す。
■“新酒”文化の日本酒で“古酒”の可能性は
