静かな退職は「ぐうたら社員ではなく合理的」増加傾向にある調査結果も
『静かな退職という働き方』の著者で雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は、静かな退職について「よく勘違いされるのが『ぐうたら社員』や『しがみ付き社員』という人たちと同じにされるが、全く違う。端的に言えば『無駄な仕事(業務)をやめればいいんじゃないか』『無駄な仕事はしません』ということ」と説明。
また、会社側と働く側にとって合理的だという見方もあるという。「例えば静かな退職者には、無理難題は投げられない。無理難題はいわゆるバリバリ社員の方がやる。そのときに差がついて当たり前。つまり彼らは働かなくていいけど、給料も上がらない。優秀な人はバリバリ働き続けてていい。そうじゃない人もヒラとしてやっていけばいい。新卒も学年の人口が減ってきてるから、昔ほどたくさん採らない。こう考えると非常に合理的じゃないか」。
「静かな退職者に関する調査 2025年」(Great Place To Work Institute Japan.)によると、2024年1月は2.4%で、2024年12月は2.8%で、実践者の割合が増加したことがわかった。年代別では、25歳〜29歳、40歳〜44歳の伸びが大きく、若い世代とミドル世代で実践者が増加している。
広がりを見せている要因のひとつに「女性の社会進出」があり、海老原氏は「2010年代中盤ぐらいから、女の人が家事育児をやりながら普通に働いていける社会になってきた。そうすると女の人は、マミートラック(出産・育児を理由にキャリアの幅が制限される状況)と言われて、キャリアをなくしてしまう。女の人だけにこういう強制をするのはおかしいんじゃないか。働きたい人がバリバリ働いて、働きたくない人は男でも女でも早く帰れる仕組みのほうがいいんじゃないかっていうのが今のより戻しだと思ってる」との見方を示した。
しかし、日本の会社にはいまだに「無駄な仕事でも意欲を持って取り組むのが当たり前」という考え方が根強く残っているとして、「『あなたはバリバリ働くコースで働きたいって言っても能力ないから一生ヒラの方にいた方がいいんじゃない?』と企業から言われることもあると思う。『そっちの方が楽でいいよ』と言われて、そっちでずっとやってる人もいると思う。それに対して差別したり、恥ずかしいというような価値観はなくした方がいい」と指摘した。
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