16日の農水大臣の会見で、コメ価格高騰の新たな対策案として「政府備蓄米の流通の円滑化」、「政府備蓄米も含めた供給の強化」、「消費者への丁寧な情報発信」の3つが挙げられた。
課題として挙げられた「備蓄米の流通」について、農業政策に詳しい三菱総合研究所の稲垣公雄研究理事は「有識者も考えが足りなかった」と振り返る。
「20万トンのコメを運ぶのに、4トン車だと5万台必要。どう出すのかを計画するのに、一定の期間かかるのは、ある程度は仕方なかったと思う。ただ、約3週間で(小売りに届いた割合が)1.4%というのはさすがに少なすぎる」
価格があまり下がらない中、今回発表されたのが、小売りまで約1カ月を目安とした早期の販売計画を立てた場合に“優先枠”が割り当てられるというルールだ。月ごとに放出される10万トンのうち、6万トンに適用される。
稲垣氏は、「政府も少し焦りが出始めた。全農をはじめとする業者に、『もっとスピードアップしてくれ』と明確に打ち出したことになると考えている」という。
また、「政府備蓄米も含めた供給の強化」では、買戻し条件を原則1年から5年に延長する案が示された。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介氏は「もともと買い戻し条件はおかしなルールだと思っていた」と語る。
「『備蓄米は放出するが、どこかのタイミングで買い戻す』というのは、市場の供給量としてトータルで見たら変わらない。コメの値段を下げるために供給量を増やさなければならないのに、買い戻すと言われたら、市場は『またいつか上がるよね』という期待を抱いてしまう」
これを受け稲垣氏も神庭氏の指摘に同意する。
「当初から買い戻し条件をつけている以上、需給に対してはトータルで見れば効果がなくなってしまい、時限的なものでしかなくなると思っていた。実は農水大臣は当初、1年以内と言っていたが、最初21万トンを決めた時から、柔軟性を持って考えると言っていた。現実問題として、今買い戻そうと言っても、買い戻すコメがない。(買戻しの延長について)4月半ばぐらいから、『そうせざるを得ない』と我々は見ていたが、それが改めて確認されたところだと思う」

