この救助の有料化について、山を愛する人たちはどうみているのか。「賛成なんだけど、結局(気になるのは)金額」(登山ファン)、「助けてもらうにしても、それだけの人に迷惑かける。それくらいのことは必要」(登山ファン)、「基本的には賛成。安易な救助要請が多いと感じる」(白馬山荘支配人 熊岡潤氏)、「言葉悪いだろうけど、好き勝手にやって『すみません 遭難しました』ってそれはない」(みなかみ山岳ガイド協会 亘理健二氏)、「大体10人前後は亡くなる。冬山だけで。基本的には(お金を)取るべきだと思う」(山梨・太子舘 鈴村直希氏)

 山での救助件数の増加について「山と渓谷」の萩原浩司元編集長はこう語る。「遭難事例が増えた原因の一つには、間違いなく携帯電話を含めた通信網の発達。昔の『山に入ったら自分の命は自分で守る』という、その時代は何か事故があっても連絡手段がない。今はいざとなれば何とか助けてくれるのではないかと、そういう意識が安易な救助要請を生んでいる」。

 一方で、富山・阿曽原温泉小屋(元富山県警察 山岳警備隊)の佐々木泉代表は「誰も事故を起こしたくて起こしているわけでもないし、そこらへんはちょっと難しい。あまりにもワガママな勝手なことやって事故を起こされても、助けに行くほうも命がけで入っているから勘弁してよって話」と語る。

 実は、長野県では2004年に有料化導入の議論が持ち上がったが見送られたという。山岳遭難発生件数はワースト1位だが、導入が難しい理由があるそう。「警察も民間にも救助隊が長野県にはある。組織として動いているので『分かりました!すぐ有料化しましょう』という流れに持っていくのは、長野県はちょっと厳しい」(長野・涸沢ヒュッテ 山口浩一専務取締役)

 他にも第三者が目撃して要請した場合どうなるのか。もし支払いが不可能な場合誰が負担するのかなど運用面での懸念もあったという。

 萩原元編集長によれば「山が好きで来てくれた人、そこで動けなくなった人を安全に帰すために、それを救うのは山に暮らす者たちの義務であるとおっしゃった方がいた。山を守る者にとってはそれが当たり前。救助のためにそれに対する対価が求められるとか、そういったことは一切ない」という考えもあるそうだ。

救急車の安易な要請も社会問題に
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