日本時間25日まで4勝3敗ながら防御率は1.43と圧倒的な数字を残し、同26日のドジャース戦では大谷翔平にホームランこそ打たれたものの、続く2打席は凡退させ、6回途中1失点で今季5勝目をあげたメッツの千賀滉大。同投手が好調の要因である“ある球種”について語った。
2025年シーズン、千賀の投球スタイルは確実に進化している。その象徴が、今季から本格的に採用された新球種・シンカーだ。千賀といえば、最速160キロを超えるストレートと、代名詞である打者の目の前から消えるように変化する“お化けフォーク”で知られているが、それらに加えて打者の手元で動く“もうひとつの武器”が千賀に加わった。
本人も「今年から練習して、良い形で動くようになったので使おうかなと思った球」だと語っており、本格導入は今季からとなる。メジャー特有のマウンドの硬さやボールの質感に慣れたことで、使い始めたというわけだ。
今季千賀が投じた球種の中でシンカーは6%と投球割合こそ高くはないが、まさに“魔球”のように、要所で威力を発揮する。その代表例が4月13日(日本時間14日)のアスレチックス戦・2回裏のワンシーンである。
この回、無死一塁で迎えた打者に対し、千賀は初球にカットボールを外角へ見せ球として投じ、続く2球目に選んだのが真ん中低めに沈む軌道を描いたシンカーだった。打者の芯を完全に外した打球がサードに飛ぶと、セカンド、ファーストへと転送されダブルプレーが完成した。
MLBデータサイト「Baseball Savant」によると、このシンカーはスピン量2167rpm、縦の変化が26インチ(約66センチ)で、打った打者の打球速度は72.3マイル(約116.4キロ)、打球角度-25度。理想的な“バットの下に当てさせて詰まらせる”投球が実現していた。
千賀はこの球を「スライダーやスイーパーとは逆方向に曲がる球で、相手打者の狙いを絞りづらくできる」と語る。新たな変化を武器に、投球の幅を大きく広げることに成功した。さらにこの球は、フォークやスライダーよりストライクゾーン内に見える時間が長く、そこから沈むという打者にとって厄介なボールだ。
千賀のイメージといえば“お化けフォーク”の一辺倒という印象が強かったかもしれない。しかし、2025年はストレートが32%、フォーク28%、カットボール21%で、これら3球種を軸にスライダー、スイーパー、そしてシンカーも各6%ずつ織り交ぜるなど、多彩なボールを使い分けながら、打者に的を絞らせないスタイルにシフトしている。
シンカーについて千賀は「余裕ができたら使おうと思っていた球」とも話している。満を持して今季、“切り札”が導入されたというわけだ。
前述の「良い形で動くようになった」という言葉には、単なる球種の追加ではなく、“魔球”として仕上げてきた自負と技術が込められている。千賀の新たな武器、6%の魔球はこれからも静かに、しかし確実にメジャーの強打者たちを仕留めていくに違いない。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)
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