■「筋ジストロフィー」を抱える娘と毎年海水浴や旅行へ
生まれつき筋肉が徐々に弱くなる「筋ジストロフィー」という疾患を抱える、井関ゆうなさん(23)。20歳の時に誤嚥性肺炎を起こし、医療的ケアが必要になった。それでも毎年、海水浴や旅行などに出かけ、家族で充実した生活を送っているという。
ゆうなさんの養育は朝6時の朝食の注入・吸引・服薬などから始まり、7時におむつ交換、9〜16時はデイ出張、18時に夕食の注入・吸引・服薬をし、21時に入眠する。ただ、これは一例で、他にも朝まで3〜5回の覚醒(1時間おきの日も)、吸引・体位交換などが発生する。通所ケアを受けられるまではさらに大変な状況だった。
母親の宏美さん(46)は、「日常的なケアで大変なのはやはり吸引。時間が決まってなく、寝ていようが、ご飯を食べていようが、お風呂に入っていようがしなくてはいけない。ちゃんとした睡眠がとれないので、自分自身の思考能力が落ちてしまうことがある。誰かに助けてと言っても、『頑張れよ』と思われるんじゃないか」との思いを語る。
医師のネット投稿について、「到底理解できるものではないし、不快で嫌悪感しかない」と批判し、「私たちが言いたいのは安楽死云々ではない」と訴える。「助けてもらえるような制度の整備を一緒に考えてほしい、子どもの命が両肩に乗っているのを半分助けてくれないか、というのが投げかけたいこと。もちろん、社会に丸投げするつもりなんてない。ただ、今回の投稿で追い詰められたりする親が出てきたり、安楽死を認めるということを理由に『こういう選択ができるのにお前はしないのか』と圧力がかかるような世の中になるのでは?知らないところで命が奪われてしまうんじゃないか?という恐怖はすごくある」。
一方で、「投げ出してしまいたい」という思いが生まれる時もあるという。娘は大切な存在であることに変わりはないものの、それでも「口をふさいでしまいたい」「この子がいなければ」と考えたことも。また、誰も助けてくれないことの孤独感、医療的ケア児の事件を見聞きする度に「他人事ではなく、明日は我が身」だと感じている。そのため、「レスパイト(一時休養)」できる選択肢の必要性を訴えている。
■次男が医療的ケア児、自治体ごとに感じる“窓口格差”
