■上がったように見えて実はマイナス?

公約にマジック?
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 2024年の名目GDPは609.3兆円。ここから所得が5割以上アップし、名目GDPも1000兆円に達すると聞けば、大幅成長と感じる人もいる。しかしマネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は「どちらの目標もただの数字のマジック」だと厳しく指摘する。「(公約を)見た瞬間、国民を馬鹿にしていると思った。『72の法則』というものがあるが、7%複利を10年やれば元金は2倍になる。15年で5割だったら年2.8%のペースだ。今、足元の消費者物価は3%ほど上がっている。このインフレ率3%が続けば15年後には55%増だから実質賃金はマイナスということになる。はっきり言って目標が低い、目線が低すぎる」。求める目標としては賃金を15年間、5%アップを求め「これなら倍になる。だから『所属倍増計画』ぐらいの打ち上げ方をしてもよかったのでは」と述べた。

 名目GDP1000兆円については、近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏が掘り下げた。「『名目』とつけているところがマジックだ。2.8%で経済が成長しても、2.8%のインフレがあったら、生活は何も変わらない。貨幣価値はインフレで下がっていくのに、今と同じことをしていると利益が増えたように見える。この名目値でものを語っている限りはあまり意味がない。一番大切なのは実質値。もっと言えば国民1人当たりのGDPだ」と説明した。さらに名目GDPは国際比較として見るべきものだという。「名目GDPという指標を使う時は国際比較なのでドル換算で見る。今、日本のGDPは600兆円を超えたというが、円安なのでドルベースで見ると30年前よりマイナスになっている」と語った。

■日本の1人当たりGDPは38位…
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