■「情報の流れが途絶えてしまうと本当の闇になる」

【写真・画像】「闇をあばいてください」本部長が隠蔽した?なぜ元幹部は逮捕されたのか、メディアへの家宅捜索は適切だったのか…鹿児島県警の疑惑 5枚目
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上智大学文学部新聞学科 奥山俊宏教授

 ハンターに情報を流した元巡査長は、裁判で自分の行いが公益通報ではなかったと認め、
有罪が確定した。「見返りの情報をもらい自分の評価を上げたかった」と述べる一方、強制性交を訴えていた女性が不びんで、警察組織に漠然とした不信感があったとも話した。

 元巡査長が提供した資料には県警の「隠ぺい体質」を疑わせるものもあった。2023年10月に内部向けに発行された「刑事企画課だより」。不要な資料の廃棄を促すなか「再審や国賠請求等で保管していた捜査書類や写しが組織的にプラスになることはない」と記されていた。

 刑事企画課は、捜査の在り方を適正に指導するため2007年に設置された。県警の違法な取り調べで無罪の人たちが自白を強要された「志布志事件」の反省としてできた部署だ。えん罪被害者や再審を支援する団体からは、当然非難の声が相次いだ。

「衝撃的な内部文書。真実を追求すると言っているけれど、その真実はあなたたちの組織にとって都合のいい真実だけで、私たちが本当に求めている真実とはかけ離れたものだと、よりはっきりした」(映画監督・再審法改正を目指す市民団体共同代表 周防正行氏)

 2024年8月、県警は一連の不祥事に対する再発防止策を発表した。職員の倫理意識や情報リテラシーの強化、警部補以下の職員が本部長に直接提言できる場の設置といった取り組みとあわせ、掲げたことがある。

 今回の事件について、県警の主張を裏付ける文書があるのか情報公開請求を行っているが、これまでのところ開示された情報はない。

「現場で良心を持っている人、こんなことではいけないんじゃないかと思っている人が勇気を奮って外部の機関、ジャーナリストや報道機関に情報を提供してくれる、そういう情報の流れ、ルートをちゃんと守らなければいけない。そういう情報の流れが途絶えてしまうと本当の闇になってしまう」(奥山教授)

※肩書等は地上波初放送2024年9月7日時点

(鹿児島放送制作 テレメンタリー『秩序と闇 ~それは犯罪か、内部告発か~』より)

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