では、どんな人物が暗殺や特殊工作を行うのか。「モサドは自分で手を挙げて入ることができない他薦の組織だ。自分で手を挙げて入ってくる人は、スパイの可能性がある。軍の上官や戦友が『この人は優秀だから』とモサドに推して入る」。

 実際にイスラエルの諜報機関は、これまで数多くの暗殺計画を実行してきたとみられる。1972年には、ミュンヘンオリンピックの選手村でイスラエル選手11人がパレスチナの過激派組織「黒い九月」に殺害されたことへの報復として、「神の怒り作戦」を実行。モサドは事件に関与した人物を世界中で追跡し、1979年までに巻き添えを含め20人近くを銃殺・爆殺した。

 核開発を進めるイランに対しては2020年、イランにおける核開発の中心人物であるモフセン・ファクリザデ氏をテヘラン近郊で襲撃し殺害した。このほかにも、核開発に関わる科学者数人が暗殺され、イランはイスラエル政府やモサドの関与を主張している。

 2024年1月には、レバノン・ベイルート郊外のハマス関連施設をドローンで攻撃し、ハマスの政治部門ナンバー2で、軍事部門「カッサム旅団」の創始者であるサレハ・アルーリ氏を殺害した。ハマス側はイスラエルの関与を主張。これは2023年10月のハマスの大規模攻撃に対する報復だとみられている。

 レバノンを拠点とするイスラム組織「ヒズボラ」との衝突が激化すると、2024年9月にレバノン・ベイルート郊外のヒズボラ司令部を戦闘機で空爆し、最高指導者ナスララ師を殺害した。これについては、イスラエル軍が作戦を認めている。

イスラエル国民は“暗殺”をどう考えている?
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