「名前で呼ばれたことが1回もなくて…」
次に、世界の名前事情の中でまずはタイを調べた田島記者。
タイの名前の特徴は「とにかく長いこと」だという。
タイ語スクールで講師を務める女性の名前は「チャイガーンジャナウィワット・スックスコン(ネーン)」さん。
「ネーン」はニックネームだ。
実はタイでは家族や親しい友人、場合によってはかしこまったシチュエーションでもニックネームで呼び合う。
ここまで長いのは名前に意味がたくさん込められているからだという。
例えばこの女性の場合、「チャイ」=「勝つ」、「ガーンジャナ」=「宝石」、「ウィワット」=「発展する」、「スック」=「幸せ」、「スコン」=「花の香り」を意味する。
そしてニックネームの付け方も斬新で「ネーン」は「赤ちゃんのミルクのブランド名」で赤ちゃんの時から「ネーン」というミルクが好きだったことで親が付けたという。
また、同じ場所で働くスパヌット・イムプラユーンという名前の女性のニックネームは「チーズ」だ。これは彼女の母親が妊娠中になぜかチーズが食べたくて仕方なくなって父に頼んで買ってもらったことに起因する。
日本では名字で呼ぶのが一般的だと伝えると、2人のタイ人は「すごく違和感」「なんかおかしい」「私の名字がすごく長いので…迷惑だなと」「(タイでも)イムプラユーンの名前で呼ばれたことが1回もなくて…」と感想を口にした。
そもそもなぜ長い本名となり、そしてその代わりにニックネームを使うようになったのか?
神田外語大学元教授 タイ出身重富スパポンさんは「元々は1つの音(節)だった。だが(信仰する)サンスクリット語の文献や昔の物語の主人公の名前を使って名前が長くなっていった。最近は自分のアイデンティティのためにもっと長くなる」と説明した。
だが、やはり「長いと呼びにくい」として短い本名で呼び合う伝統がニックネームとして復活したという。
タイ人は、ニックネームで呼び合うことをどう思っているのだろうか?
田島記者は「ネーンさんは小さい時から使っていたことで、愛着があると言っていた。難しい本名も親の願い、希望が込められているので大事にしたい。一方で社会的な自分を表現するものでもあると言われていた」と説明した。

