「ベーコンダブルチーズバーガー」に改名

朝日新聞文化部 田島知樹記者
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 ハンガリーの新しい名前の申請について田島記者は「年に500件前後の申請があるが、いくつかの基準があって認められるのは1〜2割ほどだ。基準の1つは、『ハンガリー語のスペルと読み』でないといけないというもの。例えば、Jennifer(ジェニファー)という名前は英語でもよくある。このスペルを『ジェニファー』と読ませる場合は(同じスペルでは)認められずハンガリー語では『Dzsenifer』とする必要があるのだ。他にも既に名前として広く使われている実績が必要だったり、名前の語源の調査もする。さらに言うと、名前は必ず性別を表さなければならず、両性で使えるユニセックスの名前は認められない」と説明した。

 では、ハンガリーの人たちはこの規則に不満を持っているのだろうか?

 田島記者は「22人に聞いたところ、割と肯定的で『規則が厳しい』と答えたのは1人だけだった。『リストを通して自分たちの伝統を守りたい』と話した人もいた。ハンガリー人は伝統を大事にする人たちで『私たちハンガリー人は、何百年も独特な言葉、そして文化を育んできた』という言葉も聞けた」と振り返った。

 ハンガリーで結婚したら名前はどうなるのだろうか?

 田島記者は「これはリストの話とはまた別の問題だ」として以下のように説明した。

「まず、ハンガリーは第二次大戦後、すぐに夫婦別姓は認められた。そのため、女性は結婚したら元々の自分の姓を保つこともできるし、結婚相手の姓をもらうこともできる、選べるようになった。だが、当時の多くの女性は夫の姓をもらうどころか、自分の姓・名、どちらも変えた。なぜならハンガリーの女性は結婚をすると夫の姓名に『ネー』という“接尾辞”を付けて、『誰々の婦人』という名前に改名していた。日本人からすると疑問に思うかもしれないが、ハンガリーはやはり伝統的な価値観・家族観を大事にしている国。社会の中で結婚していることはステータスであり、むしろそれを示すことはいいことと思われていた。だが、時代を経ることに、少しずつ法改正が行われていって2000年以降の法改正では、複合姓なども含めて7パターンから選ぶことが可能になった。今では『ネー』を選ぶ人もそれなりにはいるが特に若い世代は選ばず、夫婦別姓にするなど、いろいろなパターンを選ぶようになっている」

 他にも名前でユニークな国として「簡単に姓名を変えられる」イギリスが挙げられる。

 中には「ベーコンダブルチーズバーガー」に改名した人がいるという。

 田島記者はイギリスの事情について「他には『非常口』を意味する『ファイヤーエグジット』に改名した人も。そして、2021年にニュースになったのは、ある男性が有名歌手のセリーヌ・ディオンと同名に改名したこと。その男性はクリスマスにお酒を飲みながらセリーヌ・ディオンの曲を聞ききながら潰れて寝てしまった。数日後、仕事から帰った彼のもとに『改名のお知らせ』が届いていたのだ。要は、酔っ払って、ふらふらとしながらも簡単にネットで改名できてしまう。日本だったら批判されるかもしれないが、イギリスでは個人の選択はかなり尊重されるため、特に批判もなかった。さらに、当時はパンデミックによるロックダウンもあって少し荒んでいたため笑い話として面白おかしく受け取られたという。それだけではなく、改名しやすいということは、トランスジェンダーやノンバイナリーの方の生きやすさにつながっているとの指摘もある」と説明した。

 田島記者は取材を通して感じたこととして「名前はいろいろな人の思い・国の文化・歴史などが反映されていて『名前はこうあるべき』などとは言えない。リベラルでも保守でも、多くの人の価値観や思いを反映できるような社会になればいい」と話した。
(朝日新聞/ABEMA

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