──ポーカーの魅力はどこにありますか?

新田 基本、ポーカーはプラスEV(期待値がプラスになること)であれば何をやってもいいと思うんですよ。自分は昔から、静的な戦略で相手の特徴を捉えて小さく動かすことをやっていたのですが、実際にライブの大会で限られた時間の中で最大の期待値を出すとなったら、本当に何をしてもいいんです。

例えば、「この場面ではこういう選択肢は使わないよね」という状況でも、相手がどのように戦略を変えてくるかによって、通常では起こり得ないようなプラスの期待値が発生するんだとしたら、選択肢になり得るかもしれない。そこには無限の可能性があり、一見変に思えるプレーでもそれ自体は否定されるものではない。「こんなに自由なんだ」って思えたことが、自分にとってのポーカーの魅力ですね。

──自分の性格とも合っていた?

新田 そうですね、自分はよく、物事を簡略化してモデル化(抽象化)して、それを類似したパターンに当てはめるという思考パターンをよく実践するのですが、特にポーカーのトーナメントでは、毎回変数が変わっていく状況でそれをモデル化してパターンに当てはめていくことが必要なので、自分に合っているのかもしれません。

──運の要素とどう向き合っている?

新田 心の根本では、「長期では大丈夫だな」と思っています。自分がこういうプレーをして、相手がこういう戦略をとってきたからプラスEVはどれだけあるかということが明確にわかっていれば安心できるんです。逆に座学(ポーカーについての勉強)が足りていないと、そういった状況が理解できないので、不安になりますね。

──かつては学生起業も経験されているが、起業家としての経験はポーカーにどう活かされている?

新田 こじつけかもしれませんが、新しいアイデアを出す作業が好きなんです。戦略やアイデアを自由に考えるプロセスは、似ているかもしれませんね。また、起業して右も左も分からない状況では、とにかく起業家の先輩に話を聞きに行っていました。そのように「上手い人に話を聞きにいく」というスタンスは、ポーカーでも大切なことだと思います。

──AIとポーカーの関係についてどう考えていますか?

新田 「GTO Wizard」(※AIを活用したポーカースキル向上ツール)が登場したことで、ポーカー理論の学びやすさが劇的に向上しましたよね。一方で、情報があふれすぎていて取捨選択が難しかったり、「この方法はGTO Wizardの理論から外れている」といった議論になりがちで、形から入るあまり着地点が見えないまま学習してしまって、遠回りしている人もいるだろうなと。

結局「ポーカーが強い」ってなんだろう?みたいな。僕自身はプレイングにおいて「プラスEVがどれくらいか」を最重要視しているのですが、AIの発展によってそれがわからなくなる人もいるのではないでしょうか。

──改めて、大会への意気込みをお願いします

新田 自分はこれまで大きな規模の大会での成績が5位とか3位で優勝まで辿り着けていないので、まずはそこを目指したい。8人トーナメントで4位から賞金が発生する今大会では、条件が整った状態でリベンジができるとも言えます。まあ、ちょっと卓が辛い(強敵が多い)ですけどね(笑)。

ABEMA主催のトーナメントで、大きな賞金をかけて戦うということは、「ABEMAの大会で優勝すること」に価値を見出す人と、「4位以内に入って賞金を獲得すること」など、さまざまな期待値を持ってプレーすることになります。繰り返しですが、一見あり得ないと思えるプレイングでも、異なる戦略や考えがぶつかることでプラスの期待値が発生することもあり得ます。そうした状況で、僕は自分が一番期待値が高いと思えるプレーをして、優勝したいです。

◇ ◇ ◇

新田渓(にった・けい)東京大学工学部在学中から国内外のポーカー大会に参加し、2022年、WSOPの$ 1,000 No Limit Hold'em - Mini Main Eventで5位入賞。かつてはAI分野で学生起業の経歴も持つ、日本ポーカー界の若手ホープ。生涯獲得賞金は約4,800万円(7月20日時点)

ABEMA POKER INVITATIONAL 国内最高峰のポーカープレイヤー8名が火花を散らす「ABEMA」オリジナルの“招待制”新トーナメント。優勝賞金は1,000万円。8人1テーブルで一度敗退すると再エントリー不可能の一発勝負で争われる。

(ABEMA/「ABEMA POKER INVITATIONAL」より)

ポーカー初心者の千鳥&森香澄も大興奮!和田まんじゅうがテキサスホールデムのルールを解説【チャンスの時間】