■筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群とは
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所の山村隆氏による監修のもと、筋痛性脳脊髄炎(ME)や慢性疲労症候群(CFS)を説明する。脳や自律神経に影響を及ぼす深刻な神経難病で、WHOの国際疾病分類において、神経系疾患と分類(※精神的/心因性が原因でない)されている。特徴的な症状として、日常生活の軽い活動でさえ急激に身体が衰弱し、症状回復に時間がかかる。
国内の推定患者数は約10万人とも言われ、新型コロナウイルスの影響で患者の数は倍増したという指摘もある。外見から伝わらない主な症状として、睡眠障害、集中力・記憶力低下、免疫機能障害、音や光への過敏、筋力低下、体温調節障害、起立不耐性、頭痛・筋肉痛などがあり、成人が発症前の身体機能を取り戻すのはごくわずかだそうだ。
発症の原因としては、ウイルス感染により免疫に異常が起こり、脳機能や自律神経の異常によって起こるとされる。
山村氏は、「脳や自律神経に大きな問題が起きる疾患だ」と説明する。「自律神経には、脳の血流を保つ機能があるが、自律神経がおかしくなり、頭を上げることができない。脳の血流が落ち、集中力や思考力が落ちて、日常生活ができなくなる“ブレインフォグ”や、全身の痛み、おなかの調子が狂うなどの苦しみがある」。
コロナ禍以降、この症状を訴える人が増えているという。「アメリカの国立衛生研究所のレポートでは、コロナ感染期は通常の15倍多くの患者が発症したとされる。ヨーロッパでも患者が増えている。日本では、これまでこの病気を診察したことのない医師が多かったが、コロナ感染後に体調不良で病院に通い続ける患者が増え、『大変な病気だ』とわかってきた」。
篠原さんは「患者は外見でわからず、一般的な検査でも異常が出ないため、『怠けているだけじゃないか』と思われていた。山村先生の研究で、ウイルス感染によって免疫に異常が出るとわかってきたことは画期的だ」と語る。
■「怠けていると思われる」当事者の“二重苦”
