■治験開始の希望も厚労省の研究費は600万円…
2024年12月から、通院中の患者を対象に、B細胞を標的とする「医薬品リツキシマブ」の治験が開始された。目標は、まず30症例が何事もなく安全に治験を終えることで、結果をもとに、薬の価値を科学・学術的に明確にする計画だ。
山村氏は「抗体を作るB細胞に異常があるとわかり、それを標的とする医薬品を開発できるようになった。これは元々、日本でも抗がん剤として使える薬だ。患者の異常が矯正され、症状がなくなる、あるいは再発せずに安定状態を保てることを期待している」と薬効を説明する。
その一方で、「こういう特効薬は、根本的に高額医療になり、指定難病の話が出てくる」と話す。「『高額でも仕事ができれば収入を得られて、大した負担ではない』という人もいれば、『少し症状がよくなっても仕事はできない』という人もいる」。投薬は「半年に1回、点滴で静脈注射する」そうだ。
また、「医薬品の開発には、大変なお金がかかる。初期段階から関わる医師や支援者の努力も必要だ。私がこの治験をやろうと思って、3年以上の調整が必要だった。さらに大規模な治験となると、より大きな支援が必要になる」と語った。
篠原氏は「指定難病になるうえで、一番の問題が『厚労省の認める客観的な診断基準がない』ことだ。また、現在の国からの研究費は年間600万円で、どれだけの研究ができるのか疑問。厚労省の2014年の実態調査で、『患者の3割が寝たきりに近い重症患者だ』とわかっている。患者がコロナで倍増している可能性もあり、研究費も10倍ぐらい出して、早急に対応してほしい」と願っている。
研究が進み、「治験が始まったので、希望が大きい。この病気は20〜40代の若い患者さんが多い。そんな患者さんたちが、私のように35年間引きこもりに近い生活をしなくてすむ可能性が見えてきた。コロナ禍で患者が増え、海外でも研究や治験が進んでいて、世界的に治る時代に向かっている」と喜ぶ。
しかしながら、「指定難病になっていない病気だと、なんだか怪しい印象を持たれる」という課題もある。「日本は障害者権利条約を締結しているが、国連の障害者権利委員会は2022年、『費用負担能力に基づいた医療費補助金の仕組みを設置し、これらの補助金をより集中的な支援を必要とする者を含めた全ての障害者に拡大すること』といった“総括所見”を出している」。
そして、「例えば米国ではハーバード大学、コロンビア大学、スタンフォード大学、イエール大学などの一流大学で、ヨーロッパではドイツやイギリスなど、色々な国々で研究しているが、非常に複雑な病気でなかなか解明されていない。それで『診断基準ができないから指定難病にならない』というのはおかしい。障害者権利委員会では『全ての障害者』と言っているのだから、指定難病になっているかどうかではなくて、全ての困っている難病患者が、医療費助成を受けられる社会になってほしい」とまとめた。
(『ABEMA Prime』より)

