■「俺には関係ない」「手紙を書かないで」 加害者から心無い返事も
一方で、加害者の言葉を聞いたばかりに怒りが増幅し、より一層心を痛めた人もいる。渡邉保さんは、ストーカーによる暴行事件で娘・美保さん(当時22歳)の命を奪われた。美保さんは2000年、中学時代の同級生から「つきまとい行為」を受け、車で追突され意識を奪われた後、刃物で殺害された。加害者は乱暴しようとしたが、未遂で逃走。「性欲を満たす為に暴行しようと思った」として、無期懲役の判決が下った。
渡邉さんも2024年、心情等伝達制度を利用した。しかし相手からの返答は『過去のことは忘れて、人生をやり直したい』『俺には関係ない。なかったことにする』『ゼロからやり直そうと思っているのに、わざと邪魔してるようなもん。嫌がらせですよ』『二度と手紙を書いて来ないでください』など、“過去の事”の一点張り。聞きたかった謝罪の言葉は全くなかった。
渡邉さんは「ふざけた回答だ。『人生をやり直せることは絶対にない。お前は刑務所の中で死ぬんだ』との思いで、2回目の伝達を行った。よりひどい回答だったので3回目をやった。その回答はまだ来ていない」と、憤りをあらわにする。
当初、制度を利用するつもりはなかったという。「何を言っても伝わらない相手で、話しても無駄だと思っていた。刑務官も受刑者を色眼鏡で見ないために、どんな犯罪をしたか、あえて知ろうとしないと聞いた。それでは改善・更生に有効ではない。被害者の声が刑務所に届かないとダメだと思い、制度を利用することに決めた」との思いを明かした。
■心情等伝達制度の意義と改善点
