■心情等伝達制度の意義と改善点
「心情等伝達制度」は、利用開始から1年間で136件の申し出があり、113件は伝達済み(残りは作業中)。利用がきっかけで面会につながったケースもあるという。被害者遺族は「謝罪をしてほしい」「被害弁済をしてほしい」「施設で何を考え、何を学んでいるのか知りたい」と考えている。加害者の中には「考えていた以上の被害の深刻さに気づいた」など、謝罪や弁償の意思を示す一方で、反省の態度がない場合もあるそうだ。
遺族としての経験をもとに、渡邊さんは犯罪被害者の会の代表を務めている。「娘の事件がもとで、妻も亡くなった。2人の“弔い合戦”として、自分でできることは何でもやろうと、被害者の活動も積極的に行っている。30数人の会員がいて、制度を利用したのは私を含めて2人のみ。数人は『利用したい』と言っているが、『裁判の被害者参加で言うことは言った』『何を言っても無駄』『もう出所してしまった』という会員も多い」。
渡邉さんは、犯罪被害者や遺族がようやく手に入れた権利だと感じた一方で、「被害者への不安やケアという考えがない」といった問題も浮かんだ。さらに、相手の言葉に傷ついた遺族のケアや、事件と向き合い、心情を話すことの精神的負担(渡邉さんの場合、聞き取りは1時間半にも)、刑務所に出向くことへの経済的負担も改善すべき点だとしている。
■「犯人に更生は求めていない。反省して、反省して、死んでほしい」
