だが、そこには懸念もあった。臨時国会で立憲民主党の野田佳彦代表が「なんで文書を作らないのか。トランプ政権ですよ。文書を作らなければ、どんどん拡大解釈して、日本はぼられ続けるのではないか」と質問したように、欧州相手には存在したという合意文書を、日本は得ていなかった。

 赤沢氏は「合意文書を作るより、大統領令を早く出してもらい、15%の関税率を早く実現してほしい」「ぜひ信じていただきたい」と話していたが、そう信じていたのは日本側だけで、ふたを開けると「一律15%上乗せ」だった。

 日本側の認識では、元々は税率が15%未満の品目は15%に引き上げられるが、15%以上の品目には相互関税が上乗せされないはずだった。例えば、税率26.4%の牛肉は、日本の認識では26.4%のままとなるが、実際は15%上乗せの41.4%になっていた。

 この事態に林芳正官房長官は「日米間に齟齬(そご)はないことを、(日本側は)米国側に確認してきている。引き続き日米間でさまざまなレベルで意思疎通し、合意の着実な実施に努めていく」と説明。再び赤沢氏が渡米し、確認を求めることになった。

「アメリカ側が今後適時に大統領令を修正する措置をとる」
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