親子関係を証明するものが必要

発見した婚姻記録
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 舗装された道がほとんどないこの島では、船が貴重な移動手段だ。共に日本国籍の回復を願う姉のモリネ・エスペランサさん(87)は対岸に暮らしている。

 父親の名はモリネ・カマタ、出身地は沖縄。そして漁師をしていた。その証言を基に調査を進めると、戦前、沖縄の「盛根蒲太」という男性がフィリピンに渡ったパスポート記録が見つかった。

 さらに、フィリピンの町役場には母親の婚姻記録が。夫の欄には「Kamato Marino、日本人」、カマタ・モリネと似ている。

 しかし、日本国籍が認められるには、父親との親子関係を証明するものが必要だという。

━━どうして日本国籍を?

エスペランサさん「父が日本人だから。日本人の血が私にも流れているから」

 2人は盛根蒲太の娘として生まれてきたことを証明しなければならない。
 

「日本兵が『戦争が始まったから』と言って私の父をトラックに乗せて連れて行った」

猪俣典弘氏とウエハラ・パムフィラさん
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 残留2世の日本国籍を回復する支援を行っているのはNPO法人フィリピン日系人リーガルサポートセンター猪俣典弘氏だ。

 この日、猪俣氏が訪れた残留日本人2世 ウエハラ・パムフィラさん(87)は「覚えているのは日本兵が『戦争が始まったから』と言って私の父をトラックに乗せて連れて行ったことです」と語った。

 7500を超える島々が点在するフィリピンで身を潜めながら戦後を生きてきた2世たち。現地では本人への聞き取りのほか、両親の婚姻書類や本人の出生証明書などを探す。日本国籍を回復するには、集めた証拠を日本の裁判所に提出し、その判断を待つ。しかし、多くは戦禍で書類が消失するなど、証拠を揃えるのが困難な状況だ。

 父親との親子関係を証明できる資料がないモリネさん姉妹。それならば日本国内で親類を探し出すことができないか、新たな調査が始まった。

国籍の回復に向け、大きな前進
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