「父のことが大好きなんです。だから父の家族に会いたい」
戦争が終わって80回目の夏、国籍のない残留日本人は皆80代から90代。6年前、1069人と把握されていた無国籍の人数は、特にコロナ禍以降激減している。
そういった中、新たな残留2世が名乗り出たという連絡が。猪俣さんと取材班は、ニシ・マリナ(80)さんというその女性の元へ。
取材班が伝えたニュースがフィリピンのテレビ局でも放送され、それを見て現地の日系人会に連絡したのだという。
マリナさん「これまで無理だと諦めてどうすればいいかわからず。行動に移すことができませんでした」
フィリピン人の母親がずっと大切にしていたという父の写真。
マリナさん「母は『これがあなたのお父さんよ』と言いました。私は『お父さんは兵士だったの?』と聞いたら『いいえ、民間人よ』と答えました」
戦争が激しくなる中、行方がわからなくなったという。マリナさんはお腹の中にいた。伝え聞いた父の名は「ヤイトシ」。出身地は長崎県ではないか。
マリナさん「ただただ、父のことが大好きなんです。だから父の家族に会いたいんです。(日本の)親族と再びつながりたいです」
戦後80年目にして残留日本人だと名乗り出たニシ・マリナさん。父親との親子関係の証明、そして日本国籍の回復へ、新たな調査がスタートした。
日本政府による残留2世の訪日事業が実現
2025年8月、関西空港に残留日本人2世 タケイ・ホセさん(82)が降り立った。
日本政府による残留2世の訪日事業が実現したのだ。ホセさんは1990年代に名乗り出て以降、父親の身元を捜し続けてきた。
長年の調査で父・銀次郎さんが戦後日本に帰国していたことが判明。父の死を知った後も親族に会うことを願い続けてきた。
ホセさん「父が生きていた時のことについて聞きたいんです。私は父の記憶がないので日本で幸せに暮らしていたのか知りたいのです」
異母弟の竹井宏之さん(73)と対面。
ホセさん「とても大切な日です。やっと父の墓参りに行けるから。私に残された時間はあとわずかです。日本国籍を回復して残りの人生を過ごすことができたら」
外務省は今後随時、訪日事業を実施予定としている。まだ多くの残留2世が来日し父親の手がかりを捜すことを心待ちにしている。
もし救われることなく時間切れとなってしまったら…10年後、この理不尽の悲劇は「なかったこと」になっているかもしれない。
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