■1980年代は世界一だったのに…日本の漁業に何が起きた?
日本の漁業や海洋生態系を研究する水産学者である、東京海洋大学の勝川俊雄准教授は、「天然資源は獲りすぎて魚がいなくなっていて、伸びしろがあまりない。世界の漁獲高は養殖で伸びているが、日本は養殖も1980年代から減少傾向にある」と説明する。
世界の水産資源管理に詳しく、持続可能な水産業のコンサルティングを行うFisk Japan株式会社代表の片野歩氏は、「北欧や北米、オセアニアの“漁業先進国”では、実際には2〜3倍獲ることができても、資源の持続可能性を考えて行わない。それが日本との大きな違いだ」と話す。
環境副大臣の小林史明衆院議員は、日本の課題として「漁獲を規制してこなかった点」と「養殖業に対する法人参入のルールを整理してこなかった点」を挙げる。「これをキチンと整理すれば、地方で稼げる水産業が出てくる。石破茂総理が“地方創生”を掲げているが、水産改革に触れられていないのが腹立たしく残念だ」。
現状のルールでは、「魚種ごとに漁獲量の上限が決められているが、対象となる魚が少なく、また上限が高すぎるため、結局『獲りすぎている』という議論になった」という。そして「直近の成功例では、マグロの漁獲基準を厳しくして、一定数が増えてきた。それでもまだ安心はできない。『漁獲量を減らせば、漁業者の収入が一時的に落ちる』として、漁業者と縁が深い政治家が反対する。その対策を準備するのがポイントだ」と語る。
■機能していない制限枠
