勝川氏は「日本では漁業を邪魔しないように漁獲量の枠が設定されているため、頑張ってもそこに到達しない。漁獲実績の倍程度で、漁業にブレーキをかける機能を持っていない」と補足する。「ノルウェーでは、資源の持続可能性の観点から漁獲枠を設定している。がんばると2カ月程度で上限になるため、そこで漁獲をやめる。1年ずっと獲り続けても届かない枠は機能していない」。

 また、「生産量を落とさないように資源量を維持する考えから、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)という国際機関は、クロマグロの漁獲量を狭く定めている。その結果、絶滅危惧種だったクロマグロは、2017年から2023年の間に、生産的な水準まで回復した。日本の漁師は『枠がない』と困るが、枠がなくなって漁業をガマンするのは当たり前だ」

 片野氏は「世界中で買い付けしたが、漁獲枠が設定されていない魚種は基本的にない。また、日本のようにTAC(漁獲可能量)と漁獲量が乖離することはあり得ない。日本は1996年にTACを導入したが、運用がかなり特殊だ。その結果、小さい魚まで獲ってしまい、いなくなってしまった」との現状認識を示す。

 そして、「日本は世界6位のEEZ(排他的経済水域)を持っているが、養殖がうまくいかないため、2021年にノルウェーに生産量を抜かれた。EEZが日本の10分の1である韓国にも抜かれている」と、衰退する現状を伝えた。

■クロマグロは回復の兆し 漁獲を控える我慢はできるか
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