■クロマグロは回復の兆し 漁獲を控える我慢はできるか
漁業権をめぐっては、「水産物は誰のものか」といった議論もある。「アメリカやEUでは、国民共有の財産だ。アメリカでは国民の負託を受けて、国が管理しているが、日本は国ではなく漁業者に任せている」。
この日本独特の制度について、勝川氏は「江戸時代に幕府が管理できず、それぞれの漁村集落に『浜の利用権はみんなで話し合って決めよう』となった。それである程度、機能してきたが、いまの漁村は人口減少で生産が成り立たなくなりつつある。今のままだと、どんどん日本の魚はなくなっていく」と解説する。
では、どのように解決すればいいのか。「やはり水産資源が回復できる水準まで、漁獲量を一時的に下げる必要がある。減船や減産、転職支援などで、適正規模まで産業を縮小させる。それを日本はやらず、『過剰なものを過剰なまま維持しよう』としている」。
片野氏は「科学的根拠に基づいて資源管理ができていないことが一番の問題だ。漁業法は2020年に改正されたが、運用が甘い。北欧並みにして、国際的に遜色ない資源管理システムの導入を目指さないといけない。ただ社会が理解せず、反対してしまう」と話す。
勝川氏は、日本には“問題先送り体質”があるとしつつ、「ちゃんと残せば早く回復する魚種も多い」とする。「東日本大震災で、一時的に三陸の漁業が低下した後、魚が増えた。何年か休ませるだけでも違うが、休む余力がない。『どうやったらできるのか』に社会全体として向き合わなければいけない」。
■一時的に休む決断を
