■「AGI到来に我々ができるささやかな抵抗」
奥村氏は「AGI」のある未来を見据えている。AGIとは、人間のように幅広い知識とスキルを持ち、自身の判断でさまざまなタスクをこなすものを指す。例えば「将棋も指せるし」「顔も識別できる」など、多様な領域の課題を解決する能力を有し、「AGIは人類叡智総和の10倍」という人もいる。
奥村氏は現在、八丈島に住んでいる。「東京都には有人島が11あり、そこから都議を1人選ぶ。すると、伊豆大島選出の議員は、どうしても伊豆大島によくせざるを得ず、他の島からしたらなんだとなる」。そこでAGIを用いることにより、「ドラえもんをイメージして欲しい。みんなの意見を聞き、選出地の文脈もないため、公平で合理的だとなるかもしれない」という。
一方でAI活用によって、人間が元々持っている偏見を助長する懸念も指摘されている。これには「AIにはバイアスを取り除く方向へ行ってもらう必要がある。AGIの到来自体は避けられず、これがわれわれにできるささやかな抵抗だ」と返す。
選挙ドットコム編集長で元東京都議の鈴木邦和氏は、「民主主義のプロセスにおいて、すでにAIは、いい意味でも悪い意味でも貢献している」と評する。「有権者が投票を判断するための情報は、相当AIによってフィルタリングされている。すでに地方議会では、議員の質問や答弁に生成AIを使っている人もいる。遠い未来の話ではなく、すでにAIが民主主義のプロセスに入っているため、“現実に起きている問題”として認識する必要がある」。
奥村氏は「人間の面白いところは、『合理的であれば信頼する』というわけではないこと。地方に行けば行くほど、“地回り”が必要になるが、毎日話している相手の方が『だったら投票する』という人が多い。『信頼する』と『合理的』や『説得する』は、違う次元のプロセスだというところに意識を向けるべきだ」と語る。
■「依存状態は避けたい」
