総裁選出馬会見の数日前、都内のホテルに岸田派の主要メンバーが集まった。岸田派の若手からこんなニュアンスの発言があった。「菅総理以上に、5年以上も幹事長職を続ける二階氏への反発が党内には強い。だから総裁選出馬会見で幹事長への任期制を唱えれば、賛同者が一気に増える」。

 岸田氏をあおる若手に対し反対するベテラン・中堅もいた。「幹事長を本気で怒らせてもし選挙に負けたら、岸田派は次の選挙で公認をもらえなくなる」。双方の意見を聞いた岸田氏は「あとは俺に預からせてくれ」と、一言だけ発したそう。

 そして総裁選出馬会見では主戦論を選び、「聞く力」を誇示する岸田ノートまで手に掲げた。この会見で明らかに党内の流れが変わった。権力の空気に敏感な菅氏を焦らせ、自滅に追い込み、「戦わない男」と揶揄された男は、最後に戦いを選び宰相の座を勝ち取った。

 自民党は結党時から派閥が存在している。自民党内に派閥が生まれたわけではなく、派閥が集まり自民党ができた。その派閥間の、まさに血で血を洗う「主流派」の争いが、総裁選だ。

「本当に覚悟を決めた戦いだった」
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