■「喉を痛めると男性的な声に」「診察室にやたら大勢の看護師が」 当事者の苦悩

 ライフネット生命の調査(2023年)によると、男性として生まれ性自認が女性(MtF:Male to Female)の33.8%、女性として生まれ性自認が男性(FtM:Female to Male)の43.7%が、「体調不良でも医療機関に行くことを我慢した経験がある」と答えている。

“病院控え”の経験があるマキさん
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 MtFのマキさんは、健康診断の際にフルネームで呼ばれ、男性的な名前が現在の容姿となじまないために、周囲が一瞬「えっ?」という空気になった経験がある。普段は女性的な声質だが、喉を痛めると男性的な太い声になってしまうため、風邪などを引いても病院の受診は控えるという。「誰からも男性として認識されたくない。例えば待合室にご近所さんがいて、噂話をされてしまったら、日常生活にどんな悪影響が及ぶかわからない」。

 また、入院した知人の例として、「院内で着る服や入浴できる日が、性別で分けられていると。入院すると、容姿を女性として認知されるように保つ、いわゆる“パス”する状況を保つのがすごく難しい」と説明。さらに、周囲から攻撃的な目を向けられやすい風潮があることを訴えた。

 FtMの田中さんは、病院では戸籍性を名乗ると割り切っているという。しかし先日、猫にかまれて初診の外科を受診した際、診察室にやたら大勢の看護師がいると感じると、問診票の既往歴に記載した「性別違和」の箇所がペンで強調されていたそうだ。「おそらく、物珍しいから看護師の方が見たかったのかな、そういう扱いをされてしまうんだなとがっかりした」。

■アレン様「“悟って”は無理。本人たちから意思を伝えるのが大事」
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