なぜ?「利用されるほど赤字」に

ICHICO
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 千葉県市川市は、ご当地ペイである「ICHICO」を導入している。加盟店からは、「店側の決済手数料負担が少ない」などと、導入を歓迎する声も多い。利用者の最大のメリットとしては、なんといってもポイント還元だ。キャンペーン期間中は利用額の最大15%、通常時でも最大5%が還元される。

 こうしたお得なキャンペーンや市の積極的な取り組みもあって、利用者を増やしてきたICHICO。しかし課題もある。その1つが還元ポイントの原資だ。今年度、市が還元するポイントは約3億円分で、原資は国の交付金である。

 市川市のデジタル地域通貨推進課の吉沢克己課長は以下のように語る。

「現在いただいている国からの交付金を活用できなくなった場合、いま行っているような大規模なキャンペーンを市の財源で行うことは難しい」(吉沢克己氏、以下同)

 ポイント還元がなくなった場合、市内でしか使えないICHICOをわざわざ使うメリットがなくなってしまう。PayPayのように全国で使えて加盟店も多い電子決済と比べると、利便性で見劣りする。

 そうなった場合、ICHICOはどうなるのだろうか。

「補助金、助成金、交付金などを、ICHICOを利用して市民に渡す。そうすることで、市川市内でその金額が消費される。また、ボランティア活動、エコ活動、健康づくりなどのポイント事業として、ICHICOを活用する」

 もう1点の課題は、運営にかかる経費だ。決済システムの利用料、事務経費などで、今年度の市の負担額は1億円余りになるという。

 特に大きいのがチャージの手数料だ。実は利用者がICHICOにチャージする際、システム事業者に最大で3.5%の手数料が支払われることになっている。この手数料は、利用者ではなく市が負担しているため、利用されればされるほど市の出費が増えることになる。

「低い手数料でないことは間違いない。チャージ手数料は増えていくが、その分が市川市内で消費されれば、それに見合う効果も得られると考えている」

 課題があるとはいえ市川市は人口約50万人で、ICHICOに専用の職員をあてられるなど、比較的余裕がある。一方、全国を調べてみるとそうした自治体ばかりではない。

地方自治体はなぜご当地ペイをやりたがる?
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