地方自治体はなぜご当地ペイをやりたがる?

専修大学 泉留維教授
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 コロナ禍でデジタル決済が推奨されたこともあり、2020年頃から導入する自治体が増えたご当地ペイだが、国からの交付金が切れると同時に事業を終えた自治体もある。

 沖縄県読谷村は、「よみペイ」というご当地ペイの運用を3年で終えた。

「コロナ禍で消費喚起のために実施した。プレミアム期間の利用が多く、通常の利用はあまりなかった。PayPayや楽天ペイなどがある中、必ずしも地域独自のものが使われることもなくなった」(沖縄・読谷村の担当者)

 また、交付金の問題に加え、事業の意義を見出せなかったという自治体も存在した。

「ボランティア活動にポイントを付けるなどしたが、ポイント目当てでその時のみで、継続的な活動につながらなかった。交付金がなくなる中、ランニングコスト、職員の労力を考えると、費用対効果が見合わない」(去年事業を終了した自治体の職員)

 事業をやめた場合、システム構築などのコストは、無駄になってしまうが…。

「国の交付金を取ってきていて、数年やったら一応ノルマを果たしたと、やめても問題ないという判断。住民から見たら、無駄なお金を使ったという話なのだが、行政的にはもらったお金を使い切っておしまいとなる」(専修大学 泉留維教授、以下同)

 交付金でも自治体の一般財源でも、いずれにせよ原資は税金。泉教授は、ご当地ペイを導入するのであれば、プレミアム以外にどういう価値があるのかを示し続けなければならないと述べている。

「本質的な議論で見ていくと、その地域でしか使えない地域通貨を使うことで地域でお金は回るため、皆が協力して購入して使うという意義に賛同して使ってもらうのが一番良い。しかし、現状は『プレミアムが付くなら使う』となっている」

「自治体の中でも、『補助金目当て』や『とりあえずやってみる』でやったところは淘汰されていく。根拠のある予測ではないが、残っても30%くらい残れば良いのではないか」

 なぜ地方自治体はご当地ペイ事業を導入するのだろうか。地域経済の問題に詳しく、数々の自治体の現場を見てきた神戸国際大学の中村智彦教授は、以下のように語る。

「人手が少なく、交付金が下りてきても使い方がなかなか見つからない中では、手っ取り早く(ご当地ペイ事業が)使える。旅行代理店やコンピューター会社などが、ご当地ペイのシステムを売り込みに自治体に行くこともあり、自治体の職員からすると『願ったりかなったり』だと導入したがる」(中村智彦教授)

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