■「食用コオロギ」炎上騒ぎはなぜ起きた?事業撤退の理由
グリラスの“食用コオロギ”をめぐる炎上は、高校の調理実習で提供(希望者のみに提供・強制ではない)したことから、ネットニュースなどで「食用コオロギが学校給食で提供」との報道に。ネットを中心に批判が殺到し、「病気になる」「人口削減計画だ!」など陰謀論まで広まり炎上した。
渡邉氏は「炎上していること自体が、企業との付き合いでネガティブに働く。『学校での提供』がニュースバリューを持って、各所で取り上げられて、多くの人の目に触れたことから炎上が始まった」と振り返る。
廃業のきっかけとなったのは、「人間向け」から「動物向け」への転換だ。「動物向けであれば、安く作らないといけない。大きなファームを作ったり、研究開発用に補助金を取ろうとしたりしたが、当面厳しいとなった。そこで研究開発のフェーズに戻り、もう一度チャレンジすることにした」。
渡邉氏は大学で、動物向けの「高付加価値コオロギ」の開発に取り組んでいる。食べるだけで鳥インフルエンザ等のさまざまな病気を予防するワクチンの役割を持ち、コオロギの品種改良によって、育ったコオロギを食べると病気の予防になるという。
昆虫食には「早すぎたのでは」といった指摘もあるが、「研究には時間がかかり、むしろ世界的に見えれば遅い」と語る。「強がりに聞こえるかもしれないが、可能性が閉ざされているわけではない。これからまた研究開発をライフワークとして続ける」。
食文化については、「新しいものを食べる時は、誰かからリコメンドされることが多い」として、「僕は白子が好きだが、子どもの時は見た目もグロいし、絶対に食べない。信頼できる人から『だまされたと思って』と用意されるイベントが大事で、そうしてくれる人を徐々に増やす必要がある」と話す。
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