■農水省への取材では、報道と異なる回答が?
一方で、農水省に取材すると、少し報道と異なる回答が得られた。「ニュージーランドに子会社を持つ日本企業からライセンス生産に関する相談を受けている」「すでに日本が輸出している国へは出荷制限を行い、日本産を保護することを検討」「収穫期がずれる南半球産の市場では、まだ中国・韓国産が広がっていないので、日本産を広めるべく先に手を打ちたい」「正規品が評価される世界を作り、日本産品に国際競争力を持たせるのが狙い」といった内容だ。
山梨市でシャインマスカットを生産する「たぬき農園」の谷戸数彦代表は、「農水省の言い分もわかるが、ブドウは葉が付いた枝を20センチほど切って、土に植えれば、来年には芽が出てしまう。許可した相手は日本企業でも、そこから枝が持ち出される。許可を得た業者以外も生産できてしまうため、二次・三次の流出を食い止められるのか」と心配している。
日本企業に対してのライセンス認定でも、ニュージーランドでの流出リスクはあるのか。城田氏は「ライセンスは契約ベースだが、結果として契約が破られれば、当然流出するリスクはある」と解説する。
政策を考えるにあたり、生産者団体に聞き取りなどがあったのかと聞くと、谷戸氏は「そういったことはほぼ皆無だ。農業に対する補助金なども、『こういうことが進められる』という相談はJAが中心で、一般農家にはほとんど回ってこない」と明かす。「JAと”雲の上の人”では話が終わっているのではないか。私のようにJAと付き合いがなく、個人で流通している生産者からすると、そうしたニュースを手に入れるのに苦労している」。
議論の背景には、シャインマスカットなどが海外で安価に製造されていることがある。「勝手に持ち出したのか、日本から持ち込まれたのかはわからない。ただ韓国産ブドウを実際に食べると、ブドウなのか、イチゴなのか、リンゴなのか…」。
■「中国は日本産だと偽っている…風評被害がすごい」
