そして、最後の関門は中国・習近平国家主席との首脳会談だった。高市総理は今年4月にも台湾を訪問し、頼清徳総統と会談するほどの親台湾派だ。高市氏が総理が就任すると、頼総統がSNSに祝いの投稿をするほどの仲だ。2013年、中国が尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を一方的に設定してきた際には「この度の中国側の措置は何ら効力を有するものではない。日本は断じてこれを受け入れられない」と即時撤回を求める決議。習主席は歴代総理には送っていた就任の祝電を高市総理には送らなかった。こんな関係で首脳会談ができるのかと懸念されたが、ギリギリまで調整が行われ、会談が正式に決まったのはわずか3時間前だった。

「中国が首脳会談に前向きになったのは日米首脳会談を受けてから。米中関係に不安がある中国にとっては、日本との関係を一定程度良好に保っておく必要があった。高市総理にとっては幸運な状況だったと言える」(青山氏)

 顔合わせから握手の場面では、トランプ大統領のときとは大違いで、笑顔も言葉もない沈黙の10秒間があった。こんな一触即発の空気で首脳会談はうまくいくのかと思われたが、高市総理がSNSにアップしたのは、習主席が珍しく笑顔に見える2ショット写真だった。

 習国家主席は「高市総理は就任後、中国が日本の重要な隣国で、建設的かつ安定的な対話関係を構築する必要があり、全面的に両国の戦略的互恵関係を推進すると話しました」と述べた。これに高市総理は「戦略的互恵関係の本格的な推進と建設的かつ安定的な関係の構築という日中関係の大きな方向性を改めて確認したい」と発言。

 まるで示し合わせたかのように双方から出てきた「戦略的互恵関係」という言葉は、実は第一次安倍政権で中国との関係改善のために編み出した重要なキーワードだ。高市総理はここでも安倍元総理の後継者というイメージを外交に活用した。これで中国とは仲良くやっていけるのかと思いきや、高市総理は31日会談後「懸案とか意見の相違があるということは事実だ。具体的に率直に申し上げた。例えば、尖閣諸島を含む東シナ海の問題、またレアアースなどの輸出管理の問題」と述べ、中国に対し言うべきことはしっかり伝えたと強調した。

「言うべきことを伝えたのは高市さんらしさを出せたと思う。しかし実際に問題の解決に繋げられるかどうかはまさにこれからだ」(青山氏)

「高市総理は運が良い 持ってる」
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