■夫・小林さん「戦友のような感覚」 妻・ノリコさん「出産して自分のセクシュアリティーへの答えが出た」
小林さんとノリコさんはネット掲示板で出会った。性的関係はなく、2歳の娘はシリンジ法で妊娠。小林さんによれば、妻は“人生の戦略的パートナー”で、「聞かれた時は“戦友のような感覚”と答える」。ただ、スキンシップはなく、寝室は別で、ソファに並んで座ることもない。また、お互いのプライベートスケジュールに干渉せず、財布も別々。家事・育児は分担し、寝かしつけは小林さんが担当している。
小林さんは「性的マイノリティーであることを周囲に隠して、結婚して子どもを育てるとなると、互いに協力しなければならない。信頼し合って、背中を預けるくらいでないと、秘密を守っていけない」、ノリコさんは「1人暮らしが長く、誰かと暮らすことに慣れていなかった。別々の部屋があり、最初はあまり一緒にいなかったが、子どもができて今はずっとずっとリビングにいる。当初より信頼関係ができて、心を許す場面は増えてきた」と語る。
自身の性的指向はどうするのか。ノリコさんは、夫に家庭外で「パートナー」を作ってはダメなどのお願いや決め事はしていない。ただ子どもが生まれてからは、何か家族にとってトラブルになる様な事を持ち込んでほしくない、自分の耳に入れてほしくないといった思いがあり、「互いに『子ども』の成長を最優先に行動する」と決めている。
友情結婚に対する疑問や懸念点として、「愛情が無いのに相手を本当に思いやれる?」「どちらか片方に愛情が芽生えた場合は?」などもあるが、小林さんは“話し合い”の必要性を語る。「結婚や出産、育児といったライフステージの変化により、すれ違いが起きることもあった。共通認識として『話し合い』があるため、互いに投げ出さず、折り合いを付けられる形を考える。そのために言葉を重ね合えるのは、友情結婚ならではだ」。
ノリコさんは「将来に対する不安はない。結婚して子どもを生んだ時点で、自分のセクシュアリティーに対する悩みに答えが出た。悩むことはこの先ないかと思う。パートナーを作る気も、誰かを好きになることもないだろう。今ある悩みや不安は『この子はどう成長するか』という漠然としたもので、それは恋愛結婚でも同じだ」として、「このままでいられるかの不安はあるが、それ以外の悩みが特にないのが、友情結婚の良さだ」と自身の考えを述べた。
■“友情結婚”であることを将来子どもに伝える?
