■ 遺骨を引き取らない“0葬”も
新たな弔いの形として、「0(ゼロ)葬」も注目されている。宗教学者の島田裕巳氏が著書で提唱したもので、「葬儀なし、遺骨も引き取らない究極のシンプル葬」を指す。遺骨がないので墓の心配もなく、お迎えから安置して、火葬する流れを取る。遺骨は火葬場が引き取る、もしくは自然散骨で、最大35万円。なお、遺骨の処理費用がかかるため、安価に抑えられるわけではない。
0葬を行う「葬儀24ドットコム」の近藤純一代表は、利用者について「一番多いのは、子どもがいないため、お墓参りする人も継承者もいないという人。墓石は買っているが、お墓の土地は借りているだけだ。誰も何年も管理費を払わなければ、更地にして別の人に貸し出すのだから、最初から建てないほうがいいという人も多い」と語る。
葬儀24ドットコムが、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の火葬場83カ所を調査したところ、「全骨引き取らない事」を認めている火葬場は12カ所(14%)のみだった。遺骨が残らない火葬は、火葬場の規則で不可となっており、火葬場の場長は「技術的には遺骨の形(固体)を残すことなく、すべて気体にすることは可能だと思う。しかし、遺骨を拾ってもらうことを斎場の役目としているため、そのような申し出があっても対応はできない」と話す。
火葬場に引き取ってもらえないため、近藤氏は「自分たちで海洋散骨している」という。「最初は懇意にしているお寺の合葬墓に入れてもらうなども試した。ただ、そうすると『お骨を持って帰らない』0葬にもかかわらず、あれこれ要望する人が出てきた。海洋散骨でも『あの海がいい』『山の方がいい』と言ってくる人はいる」。
2014年から開始し、需要は増えていくと予想していたそうだが、「そうでもなかった。増えてはいるが、ゆるやか。親戚などに止められるケースもある」という。加えて、「葬儀をすると、花や仕出し料理、返礼品など、いろいろな人が経済的に潤うが、0葬は誰も潤わないから応援してくれない」という事情も明かした。
■お墓の必要性とは
